「置かれた場所で咲きなさい」
渡辺和子:著
幻冬舎文庫
この本を既にお読みになった方も大勢いらっしゃると思います。
読んでなくても「置かれた場所で咲きなさい」という言葉はどこかで目にしたことがあるかもしれませんね。
私がこの本を手に取ったのは17年の晩秋の頃でした。がんの手術を受け抗がん剤治療を続けながら、母の介護に追われていたときです。
色々な意味で閉塞感を感じ、精神的にも少し疲れていました。
そんな時、病院へ行く途中でたまたま立ち寄った書店でこの本を見つけたのです。
ページをめくるたびに、一つ一つの言葉に頷き、励まされ、救われたような気持ちになったのを覚えています。
この本を語ろうとすると、どうしても母の介護のことが思い出されます。今回の記事は私の個人的な介護にまつわるエピソードが中心となっていますので、ご了承ください。
アマゾンの内容紹介
Bloom where God has planted you
置かれたところこそが、今のあなたの居場所なのです。
咲けない時は、根を下へ下へと下ろしましょう。
どうしても咲けない時は・・・
一人の宣教師が短い英詩を手渡してくれました。
Bloom where God has planted you(神が植えたところで咲きなさい)
「咲くということは、仕方がないと諦めるのではなく、笑顔で生き、周囲の人々も幸せにすることなのです」と続いた詩は、「置かれたところこそが、今のあなたの居場所なのです」と告げるものでした。
著者の渡辺和子さんは大学卒業後にノートルダム修道女会に入信された修道士なので、この本に出てくる言葉もキリスト教の教えが色濃く反映されているように感じました。
「置かれた場所で咲きなさい」これだけだったら、それほど私の心に刺さることはなかったと思います。
だけど、この言葉にはこんな続きがあるのです。
どうしても咲けない時もあります。雨風が強い時、日照り続きで咲けない日、そんな時には無理に咲かなくてもいい。その代わりに、根を下へ下へと降ろして、根を張るのです。次に咲く花が、より大きく、美しいものとなるために。
人生は順境ばかりではないですよね。きっと、どんな人にも大なり小なりの逆境の時ってあると思うのです。
この本を手にした時の私は「まさかの癌!」、そして「突然はじまった母の介護生活」。
来る日も来る日も抗がん剤の副作用に悩まされつつ、片時も休めない母の介護生活にほとほと疲れていました。
「咲きなさい」と言われたって、「そんなのムリ!」としか言いようのない状態だったのです。
でも、「咲けない時は根を張るのです」との言葉を読んだ時に、すっと心が晴れて救われたような気持ちになりました。
ムリして笑わなくてもいい。
ムリして前向きにならなくてもいい。
でも、逆境に腐るのではなく「次」に向けて、出来る準備はしておく。
・・・次に咲く花のために。
この言葉はその時の私に、「次」というステージがあることを思い出させてくれたのです。
「禍福はあざなえる縄のごとし」
人生、幸福と不幸はより合わせた縄のように交互にやって来ると言われてますね。
ツラい時期もいつか終わる時が来る。その時のことを思い描いて、今は深く深く根を張る時期なんだと自分に言い聞かせることが出来たのです。
不機嫌は立派な環境破壊
不機嫌は立派な環境破壊だということを、忘れないでいましょう。
仏教の言葉に「和顔施」というものがあります。
ニコニコして話しをすると、相手の気持ちも和み人のためになるという教えです。
だけど、反対に不機嫌な顔していると周りの人もあまり気分良くないですよね。
実生活でもドラマでも不機嫌な顔をしている人の周りで他の人たちがニコニコしながら談笑している場面を見たことがありません。
自分が不機嫌な顔をしていると、それは周りの人にとってはその場の環境破壊以外の何ものでもないということですね。
しかし、この本を読んでいた頃の私は自分の病気と介護のストレスでとてもニコニコしていられるような状況ではありませんでした。
そんな時に「不機嫌は環境破壊」という言葉を読み、ハッと気づいたことがありました。
「笑顔になれない」ということと「不機嫌な顔になる」は必ずしもイコールではないということに気づいたのです。
自分がストレスを抱えているからといって仏頂面をしていたら他の家族だって気持ちいいわけありません。家の中がドンドン暗くなっていきます。
例え笑えなくても、せめて仏頂面にはならないようにしよう、そう考えるようになりました。
実践するのはなかなか骨が折れましたが、それでも自分が仏頂面になっていることに気づいた時には心の中で「不機嫌は環境破壊」とつぶやいて表情をなおすよう心掛けるようにしました。
苦しいから、もうちょっと生きてみよう
「死にたいと思うほどに苦しい時、”苦しいから、もうちょっと生きてみよう”とつぶやいてください」苦しみの峠にいる時、そこからは必ず下り坂になります。そして、その頂点を通り越す時に味わった痛みが、その人を強くするのです。
自分の病気と母の介護でのストレスに苦しんでいた時、この言葉を読み今の状況が永遠に続くわけではない、ということに改めて気づかされました。
それと同時に、ある矛盾点に気づくことになりました。
自分の病気のストレスは、いつか元気になって癌を克服した時がゴールになります。
では、母の介護は・・・・?!
確かに介護はしんどかったです。だけど、母に早く死んで欲しいなんて思っているわけではありません。
以来、「いつかは終わる」そう考えることは自分の中でタブーになっていました。
でも、ある日ふと気づいたのです。
介護の終点は人の死ではなく、例えば食事の準備をするのと同じように「当たり前」の感覚で介護が出来るようになること。
介護のゴールは自分の気持ち次第で作り出すことが出来ると考えられるようになったのです。
そう気づいた時から気持ちが本当に軽くなりました。
最後に
今でもこの本を手に取ると、母と過ごした介護の日々を思い出します。
この本を読んでいなかったら、きっともっと辛い日々を過ごしてような気がしています。
それくらい、この本には救われました。
夜、母が寝付くとそのベッドの脇に座って、この本を何度も読み直し、心に残った言葉などは手書きでノートに写したりもしました。
▲当時の写真
人生の逆境にある時、心が折れそうになった時、そんな時に是非とも手に取っていただきたい1冊です。
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