経済 読書

【平成経済の裏側をのぞき見】「めった斬り平成経済史」

「めった斬り平成経済史 失敗の本質と復活の条件」

高橋洋一:著

ビジネス社

ペンギンオヤジ
大蔵官僚、内閣参事官などの立場で平成の経済の現場を見てきた著者だから分かる平成経済史の裏側をのぞき見できる1冊。

官僚と銀行の馴れ合い

マスコミのミスリード(不勉強?)

財務官僚の掌の上で踊らされる政治家たち

・・・などなど。

2018年出版と少し前の本ですが、平成経済を振り返ることができます。

アマゾンの内容紹介

バブルからアベノミクスまで

「失われた30年」の真実について

今こそ明らかにしよう!

官僚として20年、学者として10年、

現場、アカデミズム双方の立場で

平成日本経済にかかわり続けた高橋洋一が、

30年の歴史を徹底的に振り返り、

その真実を斬って斬って斬りまくる

全ビジネスパーソン必読の1冊登場! !

幻に終わった「ハトヤマノミクス」

 

2009年(平成21年)の総選挙で自民党が下野して民主党への政権交代が起こりました。

 

民主党の最初の首相は鳩山由紀夫氏でしたね。実は著者にとって鳩山氏は高校の先輩だったとか。

 

実は私は民主党の会合にも何度も参加しているし、よい政策を打ってくれれば政権政党はどこでもよかったのだ

民主党の会議などで私が政策についてアドバイスをすると、彼も「それはいい。ぜひやろう」と言ってくれていた。しかし、なぜか行動がともなわない。「リーマンショック」の対策などもまったくしなかった。

 

高校の先輩、後輩の縁もあってなのか、著者は何度か民主党の勉強会にも参加していたそうですが、会議の場では著者の意見に賛同してくれるのに、なぜか行動してくれない。。

 

私が民主党の勉強会に出席した際、古賀氏とふたりで話す機会があった。「金融緩和をすれば雇用状況もよくなりますよ」という趣旨のことを述べると、古賀氏は「そうなんですか?」と大変興味を示してくれた。

その後、古賀氏からは何度も丁寧な手紙をいただいき、金融緩和の件も連合のほうから民主党にプッシュするという話をもらっていた。ところが、そうした連絡がある日プッツリとなくなる。

 

古賀氏というのは、民主党政権を支援する連合の古賀伸明会長のこと。

 

労組トップの古賀会長が雇用改善に興味を持つのは当たり前のことですよね。当時は覚えてる人も多いと思いますが、リーマンショックのあおりで派遣切りなどが社会問題化してた頃ですからね。

 

・・・なのに!ある日プツリと連絡が途絶える。。

 

連絡が来なくなったのは古賀会長だけでなく、のちに民主党最後の首相になる野田佳彦氏も同じように連絡を絶ったそう。

 

野田氏とは以前から知り合いであり、割と頻繁に連絡があった。ところが野田氏は、私のことをけちょんけちょんにけなしていた藤井裕久氏(大蔵省出身)が財務相だった際の副大臣に就任。それですっかり財務省の論理に染まってしまったらしく、ご存じの通り首相就任後、増税一直線になってしまった。

 

このように著者の提言を聞いて賛同したにもかかわらず何もしない。連絡が途絶えるということが続いたことについて、このように書いてます。

 

いずれも確たる証拠はないが、ここまで民主党関係者との連絡がぱったり途絶えることが連続すると、「私の主張していることを実行されると都合の悪い勢力が、彼らに何かを吹き込んでいるのでは?」と邪推のひとつもしたくなるというものだ。

 

何かを吹き込んだのは、もちろん財務省の役人なんだろうけど、それにしても・・・って思うんですよね。

 

菅首相(ガースーじゃない方ね、カンナオト首相のことです)、なんて「増税すれば景気が良くなる!」って言い出して、「増税」を公約に掲げて参院選で惨敗ですからね。「金利を上げると景気が良くなる」って言った人もいたよね。。

 

「増税」「利上げ」で景気が良くなるって、経済の「け」の字が分かってれば、何をバカな!ってことに気づくと思うんだけど、財務省はいったい何を吹き込んだのか?

 

もしもあの時、著者の提言を受け入れていたらアベノミクス ならぬハトヤマノミクスもあり得たのかも。。誠に残念です。

 

「リーマン級」の事態でもないのに、消費増税を延期

 

2016年(平成28年)に安倍首相(当時)は消費税10%への引き上げを2年半延長することを決めました。

 

そのとき「現在の世界経済はリーマンショック直前の頃に似ている」って話しがあったじゃないですか。

 

あの時、私は増税延期は歓迎だけど、正直「?」って思ったんですよね。

 

安倍氏は以前から「リーマンショック級の事態がない限りは消費増税する」と発言していただけに、「リーマン級の事態は起きていない。だから増税しろ、公約違反だ」という声が、財務省の影響下にあるマスコミを中心に沸き起こった。」

 

あの時の増税延期について著者はこんなふうに書き記してます。

 

確かに、消費増税延期のための地ならしとしてサミットの場を活用したという見方はあるかもしれない。ただ、歴代政権のなかで財務省(大蔵省)に楯突いて政権を維持した例はきわめて少ないことから、もう一段上の権威を求めて各国首脳の同意を得ることにした、という判断は十分にあり得る。よくも悪くもそれが政治というものだ。

 

増税延期表明前に行われた伊勢志摩サミットでいきなり(予定にはなかったらしい)「現在の世界経済は・・・」って言い出したんですよね。

 

だけど「歴代政権のなかで財務省(大蔵省)に楯突いて政権を維持した例はきわめて少ない」って、どーなんでしょう?

 

政権よりも強い力を持つ財務省。それに打ち勝つためにサミットで各国の首脳の力まで利用しないといけない。。恐るべし!

 

日本企業没落のたったひとつの理由

 

平成の世は企業の統廃合が進んだ時代でもありました。

 

まぁ、メガバンクを生み出した銀行の統廃合はバブル期に節操なく融資しまくって不良債権に潰された銀行の自業自得って感はありますが、東芝やシャープ、エルピーダなどの日本の電機メーカーが没落していった背景は企業責任というよりよりも日銀や政府の責任が重いと筆者は言います。

 

かつては世界のトップを走っていた日本の電機メーカーが、ここまで落ちてしまったのはなぜか。答えは簡単だ。 技術力が落ちたのではなく、円高によって価格競争力が失われただけなのだ。

日本企業が悪いというより、マクロ政策で円高を放置しておいて、民間が「もう技術では超えられない」というところにまで追い込んでしまった、行政側に大きな問題がある と言わざるを得ない。

 

ご存知の通り、輸出企業にとって為替は経営上の大きなファクターです。円安であれば輸出が伸びて業績が上がるし、円高になれば業績が低迷します。

 

リーマンショックの後、先進国が協調して大幅な金融緩和を進めるなかで日銀は何もしなかった。。そのおかげで超円高を招いてしまったんですよね。

 

2012年(平成24年)に会社更生法を申請したエルピーダの社長が会見で次のように述べてます。

 

「為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれない」

 

これは本当にその通りだと思う。個人や企業がいくら頑張ったところでマクロ経済の趨勢には勝てないのだ。著者は言います。

 

カネを刷れば円安にできるのに、それをしなかったということ。長きにわたって円高を放置し続けた、政府と日銀の罪は非常に大きい。

感想

 

「失われた10年」とか「失われた20年」と評されることの多い平成時代。

 

バブルの崩壊からアベノミクスまでの平成経済の流れを振り返りつつ、その裏で政治家、官僚などがどんなことを考えて、何をしてきたのかが分かる1冊です。

 

とくに著者は大蔵官僚や官邸の現場で実務をこなしてきただけあって、具体的に政治家や官僚がどんな思惑で動いているのかを詳細に書いているので、読んでいて「そうだったのか!」と思うことも多かったです。

 

とくに著者の実直というか忖度しない仕事っぷりから、官僚を敵にまわすことも多かったようです。

 

著者が霞ヶ関の埋蔵金40兆円を掘り起こすと・・・

 

大事に隠してきた40兆円ものカネが「ある」ことがわかってしまったものだから、財務省はカンカンだった。

(中略)

官邸でそれをやりすぎて、財務省の少なからぬ人たちが物騒にも「高橋は殺す」と息巻いていたという。

 

こんな具合に財務省を怒らせ、財投改革をやり遂げたときには郵政の会合で「高橋さんこそ、郵政100年の悲願を達成してくれた」と絶賛されたのに数年後には郵政民営化を押し進めた張本人として郵政関係者から「悪の権化」と罵倒されたなんていうエピソードも書かれてます。

 

(まぁ、役人なんて所詮は自分たちのことしか考えてないことも改めて分かりました)

 

政府、日銀、官僚のデタラメな行動に腹をたてたり、それを鋭く指摘して断罪する著者の文章に溜飲を下げてみたり。

 

だけどね。

 

著者は返す刀で私たちにもこんな言葉を投げ返します。

 

歴史というのは、未来を読み解くヒントを与えてくれる「データ」なのだから、正しく分析したうえで教訓にしていくべき だということなのだ。  これまでも、政府や日銀は過去の教訓に学ぶことなく失敗を繰り返してきた。なぜ、そうなってしまうのか。それは厳しい言い方をすれば、国民一人ひとりが「失敗の本質」を理解していないからではないだろうか。私たちの「意識」と「知識」が常に試されている。このことを忘れてはならない。

 

個人的には、政府と日銀がしっかりとまともな財政政策、金融政策をやってくれれば日本経済はまだまだ伸び代があると思っているのですが、そうした政策についても、ダメなものダメってちゃんと声を上げるのが国民の役割なのかもですよね。

 

今回のコロナ禍でお肉券、お魚券に対してダメなものはダメと「No!」を突きつけて一律10万円給付を取り付けたように。

 

 

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