● 「思考の整理学」
● 外山滋比古:著
● 筑摩書房

ブログのネタ、どーしよう?
ブログやnote、YouTubeなどで情報発信している人にとって、ネタをどうやって見つけて記事にするか?って大きな関心事ですよね。
今回はそんなネタの悩みを解消できる(かもしれない)ノート術を紹介したいと思います。
ネタだけでなく、仕事の企画書づくりなどにも役立つかも?
2020年の夏、惜しまれつつこの世を去った外山滋比古氏のロングセラー「思考の整理学」の中からメタ・ノートについてまとめてみました。
この記事で解説している内容
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「メタ」の概念について解説してます
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著者(外山滋比古)のノート術「メタノート」について解説してます
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「メタノート」によるアイデアの育て方について解説してます
「思考の整理学」の概略
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著者の体験にもとづいた思考や思索、知的生産についてのヒントが詰まったエッセイ集
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1983年に刊行、1986年に文庫化。刊行から40年近くも読み継がれている超ロングセラー
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2008年の東大(本郷書籍部)・京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得“東大・京大で1番読まれた本”
著者:外山滋比古(とやましげひこ)のプロフィール
アマゾンの内容紹介
「もっと若い時に読んでいれば……」
そう思わずにはいられませんでした。
――松本大介さん
自分の頭で考え、自力で飛翔するためのヒントが詰まった学術エッセイ。
アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?
自らの体験に即し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。
考えることの楽しさを満喫させてくれる一冊。
「メタ・ノート」とは何か?

「メタ」とは何か?
「メタ・ノート」について書く前に先ずは「メタ」とは何か?ということについて書いておこうと思います。
「メタ」・・・よく耳にするけど、分かるようで、分からないという人もいるかもですね。
辞書的にいうと、こんな感じ。
メタとは、ある事象に対する異なる次元からの観点という意味である。
メタは、特に高次の次元からの観点を指すことが多く、例えば映画の登場人物が、劇中の存在であることを離れ、作者や観客について発言することをメタ発言という。
出典:weblio辞典 メタとは、メタの意味
「異なる次元からの観点」とか「高次の次元からの観点」とかって・・・うーむ。
この本にはこんな説明が書かれてます。
もっとも具体的、即物的な思考、知識は第一次的である。その同種を集め、整理し、相互に関連づけると、第二次的な思考、知識が生れる。これをさらに同種のものの間で昇華させると、第三次的情報ができるようになる。
もうちょっと具体的に分かりやすく説明すると、
・個別のニュース=第一次情報 (例)「80歳男性の運転する車が事故を起こした」
・新聞の社説=第二次情報 (例)「高齢者の運転による交通事故の増加などにより、運転サポート技術が搭載されている自動車を求める人が増えている」
個別具体的な事故のニュースが第一次情報であり、同種の事故が増加している点と運転サポート技術が搭載された自動車の需要が高まっている点を関連づけた社説は第一次情報に手を加えて関連付けていることから第二次情報、つまりメタ情報となる。
つまりメタ化するというのは、個別具体的な情報に対して要約したり注目すべき点を抜き出して、他の情報と関連付けたり、別の視点で捉え直して新しい情報を生み出すこと・・・と、考えればいいのではないかと。
「メタ・ノート」とは何か?
「メタ・ノート」というのは、この本の中で紹介されている著者のノート術のことです。
思いついた着想やアイデアを手帳に書きつけるところから始まり、それらを見直したりするなかで脈がありそうなものはノートに書き写す。
そのノートも定期的に見直したりするなかで更に脈がありそうなものはメタ・ノートに書き写す。
こうやって手帳からノート、ノートからメタ・ノートへ書き写していくなかで着想やアイデアの取捨選択が行われるのと同時に情報のメタ化を行っていくのです。

STEP−1 「手帳」

ふっと頭に浮かんだものはふっと消えてしまいやすい。いったん消えてしまうと、どんなに思い出そうとしても、二度とよみがえってこないことがある。
「メタ・ノート」の出発点は手帳から。
ふっと思いついたアイデアが、後々になって思い出そうとしても「はて?」となることは、きっと誰にでも経験があるのではないかと。
「逃がした魚は大きい!」という言葉があるけど、だいたい思い出せないアイデアほど「素晴らしい!」ものであったと悔しい思いをするんですよね。
そんな事態を避けるために世の中には実に多くの「メモ術」についての本が売られたりしてますが、兎にも角にもアイデアなどを思いついたら先ずはメモをしないと始まりません。
いちばん簡便なのは、手帖を持ち歩くことだ。普通の手帖でいい。ただ、一日ごとの欄をすべて、着想、ヒントの記入に使うのである。もちろん、日付もケイも無視する。スペースを節約しなくてはいけないから、細い字で、要点のみ簡潔に書く。一つの項が終わったら、線を引いて、区切る。
(中略)
ついでに頭のところへ通し番号を打っておくと、後で参照に便利である。ついでに、日付も入れておくと、いつ考えたことがはっきりする。
心覚えに、欄外に見出しのようなものをつけておくと、あとでさがすときに助かる。
・細い字で要点のみを簡潔に書く(手帖のスペースを節約するため)
・一つの着想、アイデアごとに線を引いて区切る
・冒頭に通し番号を打つ
・日付を記入する
・欄外に見出しのようなものを書いておく
この手帖中で、アイデアは小休止する。しばらく寝させておくのである。ある程度時間のたったところで、これを見返してやる。すると、あれほど気負って名案だと思って書いたものが、朝陽を浴びたホタルの光のように見えることがある。
つまり、寝させている間に、息絶えてしまったのである。そうなったら惜気もなく捨てる。
こうして手帖などに書きつけた着想、アイデアは少し時間を置いてから見直してみる。
思いついた時には「オレって天才!」と思ったようなものでも、後で見返してみると「たいしたことなかった・・・orz」というのは、よくありますよね。
STEP−2 「ノート」

見返して、やはり、これはおもしろいというものは脈がある。そのままにしておかないで、別のところでもう少し寝心地をよくしてやる。
別のノートを準備する。手帖の中でひと眠りしたアイデアで、まだ脈のあるものをこのノートに移してやる。
手帖を見返してみて、「こりゃダメだ」と思うものもある一方で「やはり、これは面白い!」と思える着想、アイデアもある。
そういう脈ありのものについては別のノートに書き写すのが「メタ・ノート」の第2スッテプになります。
まずAには、見出しを書く。何のことか。あと手帖にあったことを箇条書きにして書き入れる。これがBの部分である。手帖には三つくらいの要点しかなかったものが、こうして整理しようとすると、五つにも六つにもなるというのが、寝させている間に考えがふくらんだ証拠である。
Cは、ノートへ移した日付である。Dは、手帖のときの番号である。Eは関連のある新聞や雑誌の切り抜きなどがあれば、ここへ貼っておく。
・見出しをたてる
・手帖に書いてあったものを箇条書きで書き写す
・その際、追加したいアイデアなどがあればそれも書き足す
・ノートは書き写した日付を記入
・手帖に書いた通し番号も一緒に書き写す
・関連のある新聞や雑誌の切り抜きなどがあれば貼っておく
・基本的に1テーマ、1ページでまとめる
STEP−3 「メタ・ノート」

こうしてノートをこしらえる。
ところで、その記入したことの中には早くも腐ってしまうものもあれば、時がたつにつれて、だんだんおもしろくなってくるものもある。
それらをいっしょにしておくのはよろしくない。脈のあるものはほかへ移してやる。
ノートにもとづいて、その上にさらにノートをつくる。あとの方をメタ・ノートと呼ぶことにする。
手帖などに書きつけた着想、アイデアの中から見返して面白いと思うものをノートに書き移す。
そして、そのノートの中から更に面白いと思うものをまた別のノートへと書き写す。これがメタ・ノート作成の最終段階となります。
このメタ・ノートは、ひとつのテーマに二ページずつあてる。見開き二ページが一つのテーマということになる。頭にテーマの題目をつけ、さらに通し番号をふることは前のノートと変わるところがない。ノートにあったことを整理して、箇条書き風に並べる。余白はあとの記入のためにゆったり残しておくことがのぞましい。これは、たとえば、図3のようになる。タイトルの下のcfはノートの中の参照番号である。右のページの横線の下はメタ・ノートに移してから気付いたことである。書き切れなくなったら、紙を貼ってそこへ書くようにする。(中略)
タイトルの右にある日付は、メタ・ノートへ移記した日である。これはいよいよ醱酵してきたときに、どれくらい日時が経過しているかを知るためである。
・テーマの題目をつける
・通し番号をふる
・ノートの参照番号(ノートの通し番号)を記入する
・メタ・ノートへ書き移した日付を記入する
・ノートに書いてあったことを整理して、箇条書き風にして書き写す
・後で書き加えることができるように余白は多めに残す
・書き切れなくなったら紙を貼って追記する
何度も書き写す理由

手帖からノートへ。ノートからメタ・ノートへ。こうして2度も着想やアイデアを書き写すのには、もちろんちゃんとした理由があります。
ざっくりまとめると、その理由は次の2点になると思う。
コンテクストを変える
メモの手帖から、ノートへ移すことは、まさに移植である。そのまま移しているようであっても、決してそうではない。多少はかならず変形している。それよりも、もとの前後関係から外すことが何より、新しい前後関係、コンテクストをつくり、その中へ入れることになる。 コンテクストが変われば、意味は多少とも変化する。
「コンテクスト(あるいはコンテキスト)」は色々な形で使われる言葉ですが、だいたい「文脈」「脈絡」「前後関係」「(文化的)背景」というような意味で使われることが多いと思う。
手帖、ノート、メタ・ノートと何度か書き写すということは、その度にノートの前後に書かれている着想、アイデアが変わることになりますよね。
この本によれば、書いてある場所を変えることで新たな視点や関連を見つけることができるということらしいです。
寝させることで発酵させる
頭の中の醸造所で、時間をかける。あまり騒ぎ立ててはいけない。しばらく忘れるのである。“見つめるナベは煮えない“。
毎日のぞいていてはいけない。記録してあるというので安心する。しばらくは頭から離す。テーマ自体も新しいコンテクストへ入れられた。さらに関心もいったんその問題から解放する。そうすると、思考はひっそり大きくなったり、あるいは、消えるらしい。
「何かいいアイデアはないか?」
「この問題はどうすれば解決できるか?」
同じ問題をずっと考えつづけていても堂々巡りになって煮詰まってしまうことってないですか?
そうやって、いくら考えても何も思いつかなかったのに、ぼーっとしてる時に突然ひらめいたりするのですから、人間の発想力というのは面白いものです。
着想やアイデアを手帖やノートに書きつけたら、そこで一度頭の中から消し去ってしまう。
そして手帖、ノートの中で寝かせている間に、無意識の力でアイデアが成長したり、逆にそこで枯れてしまったりするものらしい。
・寝かせてる間に無意識の力でアイデアを成長させる
まとめ

「思考の整理学」の初版が出たのは1986年、今から30年以上も前のこと。
そんな時代に書かれたものだから「メタ・ノート」というこのノート術も「手書き」が前提になってます。
今だったら、スマホのメモ帳やクラウドのノートアプリ(Evernoteなど)などのデジタルツールを使って、同じようなことができるかもしれませんね。
だけど、手書きは手書きの効能というか、実際に手を動かすことで得られるものもあるように思うし、デジタルか?アナログか?ちょっと悩ましいところです。
まぁ、そういう手法の話は横に置いておくとして、単なる思いつきをどうやって育てていくかという問題について、本書はこの「メタ・ノート」の他にもエッセイ形式でアナロジーやセレンディピティ、拡散と収斂など知的生産について書かれていて、おもしろく読むことができました。
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