「キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編」
井上純一:著
角川書店
消費増税や日本の経済政策のことなどを描いた経済コミック「キミのお金はどこに消えるのか」の第2弾です。
著者はネットで人気の「中国嫁日記」の井上純一氏。
前作と同じように著者が中国嫁の月さん(ゆえさん)を相手に経済のことをレクチャーする形で話しが進行します。
それだけだったら、そこらへんにある「経済入門書」と同じ。
この本が面白いのは、時に月さんが思いもしないツッコミで切り返したり、中国という異文化の地で生まれ育った月さんの独自の視点で疑問を投げかけたりと、二人の掛け合いがさながらメオト漫才のようでコミックとしてもちゃんと成立させているところです。
- 不動産投資
- 日本の経済政策
- 消費増税
- 財政破綻
- 生産性向上
- 貯金と保険
などなど、幅広いテーマを扱っているけど繋ぎ合わせていくと「どうしたら我々は豊かで幸福になれるのか」というこの本のテーマに沿って構成されていることに気付きます
「なんで日本の経済政策は間違い続けるのか?!」
「いま必要なのは消費増税じゃない、減税だ!」
こうした私たちの気持ちを代弁してくれているかのようなセリフに溜飲を下げるのもいいけど、その奥にある著者の思いのようなものを是非とも感じ取って、未来の希望につなげて欲しい!
そんなことを思わせる内容になっていると感じました。
アマゾンの内容紹介
ついにきた消費増税?老後に必要な資金は2000万円?将来不安になる前に、お金の基本がわかります! 不動産投資、保険、給料、バーゲンセール、貯金・・・・などなど、身近なところから経済に迫る!消費税10%時代をどう生き延びるのか?日本の経済政策は失敗の象徴?豊かで幸福な生活を送るために、お金のことをもっと知る! ーー『中国嫁日記』の著者が贈る、かなり本気の経済マンガ。
時間は不確実性を増大させる
この本全体を理解するためのキーワードが2つあります。
その一つが「不確実性」。
時間は不確実性を増大させる。
我々が見通せる世界には限界がある!!
これはもう どうにもならない
「日本は将来必ず財政破綻する!」って、耳にしたことないですか?
国会議員でもそんなことを言って増税しないとダメだ!っていう人がいるし、ネットの世界にもたくさんいます。
実は、著者もこのマンガの中で思いっきり叫んでます。
それじゃ、いつ財政破綻するのか?
1億年後?
1千年後?
100年後?
10年後?・・・でも、10年後に日本が財政破綻すると思っている人は少なくともマーケットには殆どいない!それは日本の10年国債の金利を見ればわかる。
「日本の財政は危ない」という人がいますが、実は日本はかなり安全。
それは日本の財務省も言ってるし、IMF(国際通貨基金)のレポートにも書いてあります。(詳しくはこのマンガにも書いてます、読むべし!)
しかし、今が安全だからといって未来永劫ずっと安全とは限らない!!著者は書きます。
経済に「絶対」はない・・・時間を長〜〜〜くとれば・・・不確実性は上がりーとんでもないコトが起こる可能性は上がり続ける
未来を見通すことができない・・・これは仕方ないことですよね。
でも、「仕方ない」では済まされないことが起きてるんですよ、この日本で。。
人間は間違える!政府も間違える!
月さん「日銀の失敗はそんなに有名デスカ?」
著者「バブル崩壊から20年のデフレにいたるまで・・・超有名です」日本の経済政策は失敗の象徴であり・・・時に悪口として使われてる
リーマンショックが起きた時、日銀の失敗を研究したFRB(アメリカの中央銀行)のバーナンキ議長は金融緩和(量的緩和)を断行してリーマンショックの当事国でありながら他国に先駆けて景気を回復させました。
そして、中国は日本から経済学者を呼んで日本の失敗を研究したのだとか・・・
日銀の失敗・・・世界のお役に立っているようです(苦笑)
それにしてもなぜ、日銀や日本政府はこんなにも間違い続けるのか?!
しかし正直 なんで日本政府がここまで間違いを続けるのか・・・・俺も知りたいです・・・不合理すぎる
経済学は人を『経済人』として考え・・・程度の差はあっても皆 常により儲けるため行動すると考えてきました
でも そうじゃない
特に人は集団になるほど不合理な行動をする・・・
そうなんです!人は間違うんですよ。
これが、この本を理解するための二つ目のキーワード。
「人は間違う」ということは、つまり人の集団である「政府も間違える」んですね、残念ながら・・・
キミのお金を消しているのは、キミ自身じゃないのか?!
「不確実性」と「人間は間違える」この二つのキーワードが揃うと何が起こるのか?
タイヘンなことが起こります!!!
「不確実性」というのは、未来に何が起こるのかは誰も見通せない、ということです。
少し前に「将来の子供たちに借金を残すな!」ってことがよく言われました。
その結果、何が起こったか?
「政府はお金を使うなー!!!」「ムダな公共事業するな!!!」「公務員 減らせー」
そんな声が湧き上がりました。
で 結果どうなったかというと・・・
景気が悪くなりすぎ結婚や出産を諦める人が続出・・・・子供自体が減ってしまった・・・
その数少ない子供たちに残されたのは崩れそうなトンネルや橋、水道管等の劣化インフラ・・・先生のいない学校に病院・・・
そして著者は叫びます!
もうやめよう ありもしないみらいのために現在を犠牲にすることを!!! だって 未来は誰にも分からないんだから!!!
これを読むと、確かに日銀や政府は間違い続けたかもしれないけど、私たちだって同じように間違った道を選択してきたのではないか?って思いました。
不景気の時に政府に言うべきは「税金を使うな!借金を増やすな!」ではなく、「もっと金をばらまけ!」でいいと思うんですよね。
だって、経済の主要プレヤーって「個人」「民間企業」「政府」なんですよ。
不景気の時って個人も民間企業もお金を使いたがらないですよね。
そんな時に政府まで支出を減らしたら(緊縮財政)、誰がお金を使うんですか?ますますお金がまわらなくなって、よけいに不景気になるだけです。
「よしっ、わかった!税金を使うのはいいとして、戦闘機を買う金があるなら福祉に金をまわせ!」って思った人、いませんか?
個人的には、これも間違いだと思うんですよね。
国の予算ってゼロサムゲームじゃないと思うんですよね。
ゼロサムっていうのは、簡単にいうと片方が得すると他方が損するってことです。
戦闘機を買ったら福祉に使う金が足りなくなるじゃないか!っていう発想。
でも、思うんですよね。
「足りなきゃ、国債発行すればいいじゃん!」って。
せっかくIMFと日本の財務省が日本国債は安全!ってお墨付きをくれているのだから「日本の財政ガー!」なんて言ってる場合じゃありません。
感想(デフレマインドは恐ろしい)
月さん「お金あったら投資しますヨ 投資にリスクある あたりまえ」
著者「なぜ、月さんは迷わないのか?」「そうか!!月さんはちゃんと経済成長してる国からやってきたんだった!!!」
不動産投資の話しの中で中国嫁の月さん(ゆえさん)がとても投資に前向きなことを言います。
これは、月さんには最近は景気減速を指摘されますが、それでも曲がりなりにちゃんと経済成長していて投資すれば、それなりにリターンもある中国社会というバックボーンがあるからですね。
日本もバブルの頃は猫も杓子も株や土地を買ったりしてましたが、今の日本だったらお金があったら投資よりも貯蓄に回す人が多いんじゃないですかね〜
バブル崩壊から約20年。長く続いたデフレ不況は日本人の心も貧しくしてしまったのではないか?そんなことを思います。
少ないパイを多くで切り分けようとすれば、一人当たりの取り分は少なくなります。
そのせいか、思い出したように「生活保護はなるだけ削れ!」「老人は保護されすぎだ!」「生活習慣病は自己責任だから国のケアは受けるな」そんな経済弱者へのバッシングを口にする人が現れ、そのたびにネットが炎上します。。
この本ではこういう経済弱者へのバッシングについても「地位財」という概念で説明されていて、そこには・・・
「人間の一番の不幸は自分よりも下だと思っている人間が幸福になることだ!」
というショッキングなセリフまで書かれています!!
こんな社会、イヤですよね?
そこで、この本のテーマである「どうしたら我々は豊かで幸福になれるのか」です。
とりあえず目の前の消費増税はとんでもないことですが(この本でも繰り返し、増税反対を訴えてます)、もっと大事なこと。
お金(経済)のことをちゃんと知ることからスタートです。
安倍政権を批判したいがために増税反対!アベノミクス失敗を叫んでいる人を時折、タイムラインで見かけますが、多分それでは何も解決しない。。
そして、未来の不確実性に怯えるのではなく現在に目を向けることです。
この本の最後、著者の言葉が胸しみますよ。読むべし!
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