読書

【歴史・経済】「経済で読み解く日本史(6)平成時代」

2020年9月26日

「経済で読み解く日本史(6)平成時代」

上念司:著

飛鳥新社

ペンギンオヤジ
なんで平成の時代、日本は不景気が続いたのか?ふとそんなことを思ったことはありませんか?

バブル崩壊で幕を開けた「平成時代」。その後もデフレ不況が続いたりリーマンショックがあったりで失われた10年、20年といわれました。

 

そうした不況が続いた原因は何なのか?この本を読むと日銀による誤った金融政策や政治家と財務省の増税路線が日本経済を長期にわたって苦しめたことが分かります。

 

累計45万部突破の「経済で読み解く日本史」シリーズの最新刊です。

 

アマゾンの内容紹介

バブル崩壊と「失われた30年」の暗い時代に停滞し、沈んだ日本。日銀と財務省の誤った金融・財政政策が、日本経済を繰り返し破壊した。経済大国の常識は根底から崩れ去り、デフレの長いトンネルとリーマンショックで14万人の自殺者を生んだ正体は「政府・日銀不況」だった。教科書が教えない「経済の掟」、お金の流れが物語る、日本通史シリーズ6。

バブル崩壊と日銀の金融政策

昭和の終わり頃、日本はバブル景気に踊ってました。

 

ただ、バブルというと夜の街で1万円札を振りまわしてタクシーを止めたとか、ディスコで扇子をヒラヒラさせながら夜な夜な踊っていたとか、そんなド派手なイメージを持ってる人も多いと思いますが、本書の中で著者はこんなふうに書いてます。

 

バブル期を含む1985年から95年までの賃金および物価の上昇率は、後年言われているほどド派手に伸びたわけではなく、意外とマイルドであったということです。(中略)バブル期に歪んでいたの株と不動産の価格だけであり、それ以外の経済全般はうまくいっていて政府や日銀が手を付ける必要はなかったのです。

 

本書に収録されてるデータを見ると物価を示す消費者物価指数(総合)は以下のような状態でした。

  • 85年〜90年:1.3
  • 90年〜95年:1.4

バブル期に問題だったのは株価と不動産価格が異常に高騰していたけど、数字を見ると経済全般では思ってるほど物価が上がっていたというわけではありませんね。

 

本来であれば、加熱していた株価と不動産価格に対応すればよかったものを日銀が誤った金融政策をしたことで日本経済全体が悪い方向に転がり始めたと著者は指摘します。

 

しかし、日銀は余計なことをしてしまいました。澄田総裁時代の利上げと、大蔵省の総量規制だけで十分なのに、後任の三重野総裁は追い打ち的な利上げをして必要以上に景気を冷ましてしまったからです。そして、これを機にすべては悪い方向に転がり始めました。

 

ちなみに、この当時の日銀の金融政策(公定歩合の利上げ)は以下のようなものでした。

【澄田総裁時代】

89年5月:2.5%→3.25%(+0.75%)

89年10月:3.25%→3.75%(+0.5%)

【三重野総裁時代】

89年12月:3.75%→4.25%(+0.5%)

90年3月:4.25%→5.25%(+1.0%)

90年8月:5.25%→6.00%((+0.75%)

 

こうした当時の日銀の大幅な利上げに対して著者は以下のように批判します。

 

三重野氏が実施した金融引き締めは、日本経済を必要以上に痛めつけ、長期停滞への入り口を開くものでした。この後何度も言いますが、消費者物価指数(総合)で見れば、日銀のバブル崩壊前の金融政策はむしろ適切な水準にありました。せいぜい、澄田時代の2度の引き締めでいったん打ち止めにして様子を見ればよかったのです。ところが、三重野氏は澄田時代の利上げ1.25%を大幅に上回る、2.25%もの利上げを極めて短期間で実行してしまいました。これは明らかにやり過ぎでした。

 

わずか1年3か月で5度の利上げ!合計3.5%!どんだけ利上げするねん?!って感じですよね。これだけブレーキを踏んだのだから日本経済が大打撃を受けたのも当たり前です。

 

バブルの崩壊は大蔵省が出した「総量規制」が引き金だった、と言われることが多いですが、その裏で実は日銀がとんでもない金融政策で日本経済を痛めつけていたことが、この本を読むとよく分かります。

 

経済的に困窮した人々は・・・

 

この「経済で読み解く日本史」シリーズの一貫したテーマは「経済的に困窮した人々はヤケを起こして危険思想に走る」という歴史法則です。

 

バブル崩壊とその後の経済的な不祥事や問題の続発、そして長く続いたデフレ不況。そんな混乱の中で平成の世ではこの歴史法則が2回、発動されました。

 

最初は非自民連立政権である細川内閣の誕生。

 

1990年から93年にかけて経済成長率は名実共に急減しています。93年はついに実質経済成長率がマイナスになりました。

93年8月の非自民連立政権である細川内閣の誕生です。まさに経済的に困窮した人々がヤケを起こして自民党を政権から引きずり下ろしたのです。

 

バブルが崩壊した後、実にさまざまな経済的な不祥事や問題が起きました。

 

  • NTT株の大暴落(多くの人が株価暴落で損失を抱える)
  • リクルート事件(未公開株の裏取引で政治家や官僚が儲けてる!)
  • 住友銀行イトマン事件など銀行の乱脈融資(銀行が反社に融資)
  • 野村證券損失補填事件(大口顧客には損をさせないと約束してた!)
  • 住専問題と公的資金注入(銀行の子会社の経営ミスを税金で救うとは!)
  • 金融機関の不良債権問題(証券会社、銀行が倒産!)
  • 大蔵省接待汚職事件(ノーパンしゃぶしゃぶで大蔵官僚が接待だと!)
  • 政治腐敗(自民党副総裁、金丸信氏が脱税で逮捕・・・)

 

思えばあの頃は、もう本当にめちゃくちゃでした。

 

多くの人はバブル崩壊で給料も減り、ローンを組んで買った住宅の価格も下落、手持ちの株も塩漬けになっています。「なんでお前らだけが甘い汁を吸ってんだ!ふざけんな!」という怒りが噴出して当然です。

 

こうして38年続いた自民党政権が倒されてしまったのです。

 

2回目は悪夢の民主党政権誕生。

 

先ず、07年の参議院選挙では「消えた年金問題」で自民党が惨敗して衆参ねじれが起こりました。

 

公務員自爆テロで明らかになった消えた年金問題を激しく追及した民主党に追い風が吹き「一度やらせてみてもいいのではないか」そんな時代の空気がありました。

 

そしてアメリカ発のリーマンショックで世界経済が混乱する中で民主党政権は誕生しました。

 

経済的に困窮した人々はヤケを起こして危険思想に走る。2009年8月の衆院解散総選挙で自民党は歴史的大敗を喫し、民主党への政権交代が起こりました。民主党鳩山政権の誕生です。

 

民主党政権が危険思想だったのかどうかは人によって捉え方に違いがあると思いまが・・・

 

しかし、経済的に見れば明らかにマイナスだったと言わざるを得ないと思います。

 

悪夢の民主党政権その1

 

政権交代前の08年、日銀の後任総裁を決める国会同意人事で民主党は参院での議席数多数を盾にしてゴネまくり、何と約3週間も日銀総裁が空席という異常事態を招きます。

 

その挙げ句に新たに総裁に選出されたのが、白方正明氏でした。

 

2008年4月19日、新たな日銀総裁に白川方明氏が任命されました。日銀総裁が約3週間もの間、空席となる異常事態は収束したかに見えました。しかし、実はこの白川氏こそがトンデモない無能者であり、日本経済に多大なるダメージを与えた張本人だったのです。

 

白方総裁がどれだけ無能で、日本経済にダメージを与えたかというと・・・

 

リーマンショック発生後に先進各国が協調して大規模な金融緩和する中で白川総裁は本当に何もしなかった!!

 

そんな日銀の不作為のせいで日本は1ドル=70〜80円の超円高に襲われ、国内景気は悪化して、完全失業率も大幅に上昇してしまったのです。

 

そんな白川日銀に対して著者は手厳しく批判します。

 

日銀は金融機関が潰れないように細かい資金繰りの調節をするのみで、「動かざること山のごとし」の状態だったのです。

この行動が示すものはつまり「金融機関さえ守り切れば、その後に起こる経済現象はすべて民間の責任であり、私は関知しない」という中央銀行総裁としてあるまじき政策スタンスです。

悪夢の民主党政権その2

 

政権交代を果たした民主党の党首は鳩山由紀夫氏でした。

 

普天間基地の移設問題で「最低でも県外」「トラスト・ミー!」と言って、日米関係がギクシャクしたことが記憶にあると思いますが、経済面においても大きな問題がありました。

 

さらに鳩山内閣にはもう一つ大きな問題がありました。財務大臣の藤井裕久氏です。彼はかつての日銀総裁速水優氏に負けず劣らずの円高原理主義者でした。しかも、藤井氏は円高原理主義者であると同時に、財政再建原理主義者でもありました。藤井氏は財務大臣退任後、民主党税制調査会長として消費税増税をしっかり推し進めています。つまり、民主党政権誕生の時点で円高は放置しつつ、国民生活よりも財政規律を優先するという極めて愚かな路線が確定していたのです。

 

リーマンショックと日銀の不作為で超円高に苦しむ日本経済を放置しただけでなく、その後の野田政権の三党合意へと続く増税路線を推し進めたのです!

 

そして増税というと消費増税を思い浮かべるかもしれませんが、民主党政権がやった増税はそれだけではありません。

 

さらに悪いことが続きます。東日本大震災発生から2日しか経っていない3月13日、自民党の谷垣禎一総裁は菅首相に復興支援の財源を確保する目的で臨時増税することを提案します。なんという愚かなことを。

間もなく、各党の有力者や大臣、財界人と言われる人まで口裏を合わせるかのように「復興増税やむなし」の大合唱を開始しました。

私たちを含めて多くの人が反対したにも拘らず、復興増税はあっという間に国会を通ってしまったのです。これは日本人の優しさに付け込んだ経済犯罪でした。

 

東日本大震災に伴う復興増税を決めてしまったのです。ただでさえ経済が傷んでいる時に震災という不幸に付け込んで増税するとは・・・!

 

ちなみに95年に起きた阪神淡路大震災のときの村山内閣のときの対応はどうだったか?

 

阪神大震災に関連する復興事業費の総額は最終的に約16兆3千億円まで膨れ上がり、国がそのうち約8兆円を負担しました。その財源は国債です。悪魔のような復興増税はこの時はありませんでした。

 

デフレと超円高で苦しむ日本経済に対して消費増税と復興増税。。これでは経済が良くなるはずないですよね。。

 

アベノミクスがあって本当に良かった

折しもつい先日(令和2年8月28日)、安倍首相が突然の辞意を発表し9月16日に7年8か月の長期政権の幕が降りました。

 

それに伴ってテレビやネットではアベノミクスを総括する動きがありましたね。

 

高く評価する人もいれば、批判する向きもありました。

 

本書の中でも平成終了時点でのアベノミクスの効果について検証が書かれてます。

 

とくにマスコミや野党政治家による「実質賃金が下がった!」という批判がどれだけ的外れなのか、ということが分かります。

 

【雇用】

アベノミクス最大の成果は雇用環境の大幅な改善です。端的に言えば、アベノミクスによって平成の終わりまでに新たに仕事を得た人は439万人も増加し、完全失業率はほぼ半減しました。

「増えたのは非正規雇用ばかりで人々は貧しくなっている、その証拠に実質賃金が増えていない」という根拠のない批判があります。(中略)高齢者層の人口に占める割合が増えてくると非正規雇用は増加します。定年退職して嘱託やパートなどに職種を変える人が増えるからです。

 

【地方経済】

もう一つの批判に「地方に恩恵がない」というものがあります。しかし、これもデータに基づかない誤った批判です。地域別の雇用情勢を見る限り、アベノミクス以降すべての地域で改善が見られます。(中略)2012年以降、どの地域も就業率は右肩上がりです。もちろん、地方ごとに水準の差はありますが、少なくとも地方の雇用にも良い影響があったことはデータからも確認できます。

 

【実質賃金】

実質賃金のトリックを暴きましょう。雇用者全体の平均の名目賃金は、新規雇用が急増すると下がります。なぜなら、新たに雇い入れられる人の賃金はそれまで働いていた人よりも安いことが多いからです。仮に既存の労働者の賃金が大幅に上がった場合でも、それを上回る大量新規採用があれば平均賃金は下がります。物価は大して変動しないので、結果として実質賃金も下がってしまうわけです。これをニューカマー効果と言います。この時、全員の給料が増えているにも拘らず、平均賃金が下がるという現象が起こります。

 

【デフレ脱却】

アベノミクスの第一の矢のおかげで大きな改善も見られます。それは名目GDP と実質GDPの名目逆転の解消です。2014年以降、名目GDP が実質GDPを上回ることが多くなり、デフレの象徴とも言える名実逆転が解消されてきたことがわかります。

さらに消費者物価指数で見ると、アベノミクスが始まってから消費者物価指数(コアコアCPI)がゼロ以下になることはめったに起こらなくなりました。

 

バブル崩壊、それに続く日銀の誤った金融政策。消費増税や緊縮財政。平成の時代の経済は長く低迷を続けてきました。しかし、100点満点ではないにせよアベのミスクのおかげでデフレも雇用もかなり改善されたのです。

 

著者も次のような言葉で平成の最後を締めくくっています。

 

バブル崩壊後の「失われた10年」は昭和恐慌よりも長く、その落ち込みは大東亜戦争による破壊ほどではなかったにせよ、日本の産業が壊れ、海外に逃げていく深刻なものでした。(中略)最後の最後にアベノミクスがあって本当に良かった。あれがなければ本当に日本経済は終わっていたかもしれません

感想

 

この本を読んでいて段々とムカついている自分がいました。

 

失われた10年とか20年といわれる平成の大不況。その原因はほぼほぼ日銀や政治家、財務省など一部の人たちによる「人災」だって思えたから。

 

日銀の金融政策も酷かったけど、民主党政権時代の経済政策は最悪でした。。

 

それがあまりに酷かったものだから、その後のアベノミクスがとても素晴らしかったって思えてしまうのだけど、考えてみれば当たり前のことをやったに過ぎないんですよね。

 

二度も消費税を増税したし、財政出動も割とショボかった。。

 

それでも大規模金融緩和のおかげで雇用が改善し、デフレ脱却の糸口を作ってくれたのは本当に良かった。

 

この本、タイトルに「平成時代」とありますが、最後の最後に令和に入って1年ちょっとのことに触れられています。

 

平成の幕開けはバブル崩壊でしたが、令和の幕開けはコロナショックでした。

 

この新型コロナウイルス対策をめぐって、政治も経済も混乱したのは記憶に新しいところ・・・というよりは現在進行中ですね。

 

一律10万円の定額給付金をめぐるドタバタ劇や、国民の不安を煽りPCR原理教的な間違った言説を飛ばし続けたマスコミ報道についても書かれてます。

 

この騒動がいつ収束するかは分からないけど、痛んだ日本経済の復活のために増税だとか緊縮財政、金融引き締めなどの間違った経済対策が行われないことを願うばかりです。

 

そんな間違った経済対策が行われないようにすることこそが、歴史「を」学ぶのではなく、歴史「から」学ぶことにつながると思うから。

 

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