経済で読み解く日本史(江戸時代)

読書

【歴史】「経済で読み解く日本史(3)江戸時代」上念司:著

2019年6月17日

「経済で読み解く日本史(3)江戸時代」

上念司:著

飛鳥新社

 

第1巻「室町・戦国時代」第2巻「安土桃山時代」と続いてきて、そしていよいよ第3巻は「江戸時代」です。

 

これまでの2冊も面白く読みましたが、江戸時代は更に超絶!面白かったです!

 

江戸時代以前、日本では自国で通貨を発行しておらず、もっぱら大陸との貿易で得た銅銭が流通していました。

 

それが江戸時代になると幕府が通貨を発行するようになり、後期には藩札という紙幣まで流通して経済体制が現代とあまり変わらなくなりました。

 

よって幕府が行った経済政策と景気との関係が現代に通じるものがあり、すごく納得しながら読み進めることができました。

 

それと、江戸時代って「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」といったテレビの時代劇でお馴染みですよね。

 

でも、そういった時代劇で見ていた江戸時代の大名や町人、農民の暮らしぶりが実は現実のものとはだいぶ違うようだということも、この本を読んで気づかされました。

 

アマゾンの内容紹介

江戸時代、経済の主導を握ったのは名もなき一般庶民だった。

江戸の経済政策が「財政規律派」と「成長重視派」に入れ替わることで起きていた好不況の波。

ビジネスチャンスを求める人々は次々とイノベーションを起こし、民需による経済発展はやがて幕藩体制を崩壊へと導く。

「貧農史観」という誤り

一般的に日本人は「貧農史観」に毒されており、江戸時代といえば重い年貢に苦しむ農民とか、代官に賄賂を贈る越後屋などの悪徳商人とか、武士も貧乏して家計簿を付けているとかそんなイメージでしかとらえていないのではないでしょうか。水戸黄門や「カムイ伝」の影響は本当に侮れません。

 

結論から書くと、江戸時代の農民や町人の暮らしは私たちが時代劇で目にするような貧しいものではなかった、ということです。

 

武士の暮らし、特に大名の懐具合が苦しいものであったというのは、どうやら本当らしいですが。。

 

今から30年以上前、私が受験の際に使っていた山川出版の「詳説 日本史」という教科書が今も私の手元に残っています(物持ちいいでしょ)

 

確かに江戸幕府が成立した最初の頃を読み返すと

 

「年貢は収穫の3分の1前後であったが、小作をしている百姓はさらにのこりの半分ぐらいを小作料にとられたから、生活のゆとりはほとんどなかった」(出典:「詳説 日本史」山川出版)

 

という記述があったり、『慶安の御触書』で農民の生活に対するこまかい規定をしたりと、当時の農民の暮らしが決してラクではなかったようなコトが書かれています。

 

しかし時代が100年くらい下ると

  • 新田開発で耕地面積が増大した
  • 農機具の発展で収穫量が増えた
  • 商品作物(綿、麻、茶、たばこなど)のおかげで農家は経済的にゆとりをもつようになった

などと書かれています。

 

教科書ではこうしたことについて、さらりと触れているだけですが、この本の著者、上念氏はこの本の中で、当時の庶民の経済活動のことを深掘りして解説されています。

 

読み進むにつれてジグソーパズルのピースが一つずつ繋がっていき、最後に全体像が見えて「そうだったのか!」という快感があり江戸時代の経済状況がすごく理解できました!

 

「水戸黄門」も「暴れん坊将軍」も所詮はフィクションであり、ドラマです。

 

それを踏まえて楽しめばいいのですが、ちゃんとした知識がないと妙な偏見がすり込まれてしまいますね。

 

江戸幕府は「中央集権」ではなかった

徳川幕藩体制において、徳川家は全国3000万石分の中央政府の役割を果たさなければならないのに、徴税権が400万石分しかなかった。

徳川家はあくまで300諸侯の筆頭でしかありませんし、江戸幕府は300諸侯が集まった「大名の連合政権」でした。

 

徳川家がもっていた400万石の徴税権というのは幕府の天領地からの年貢のことですね。

 

これまた私が時代劇を見ていて勘違いしていたコトなのですが、年貢の取り立てって幕府がやっているイメージをもっていました。

 

でも、幕府直轄の天領などを除いて大半は諸国の大名が取り立てというか徴税権を持っていたんですよね。

 

それにしても、400万石の徳川家が中央政府として全国3000万石の面倒をみていたというのも、随分とムチャな話しだなぁと思います。

 

ちなみに、現在の日本の国税と地方税の割合ってご存知ですか?

 

総務省のWEBサイトを見ると平成29年度のの税収について次のような説明があります。

 

国税と地方税を合わせ租税として徴収された額は99兆680億円となっており、このうち国税が60.5%、地方税が39.5%を占めています。

国税と地方税の割合「総務省」

 

ざっくり6対4の比率ですね。

幕府(中央政府):400万石(国税)
諸大名(地方政府):2600万石(地方税)※3000万石ー400万石

 

このように読み替えてみると、国と地方の関係は江戸時代と現在では随分と違うことが分かります。

 

こういう懐具合を知ると、時代劇などで描かれている将軍と大名の力関係というのも実際はどうだったんだろうな?と思ってしまいました。

 

「成長重視派」VS.「財政規律派」

家康は幕府の財源を安定させるために、先ずは全国の金山、銀山を手中に収め貨幣を鋳造、発行したそうです。

 

しかし、やがて金も銀も掘り尽くしてしまい5代将軍・綱吉が家督を継いだ頃には幕府の財政は相当逼迫していたらしい。

 

どうしたか?

 

そこで登場したのが、当時勘定吟味役だった荻原重秀です。(中略)重秀は「慶長小判」を改鋳して金の含有量を減らし、「元禄小判」を作ることを提案します。

 

この時、荻原重秀が小判の改鋳は次の通りです。

  • 2枚の慶長小判を溶かして、3枚の元禄小判を作る
  • したがって、元禄小判の金の含有率は慶長小判の2/3しかない
  • でも、慶長小判と元禄小判の交換レートは1:1にした

その結果、貨幣量が1.5倍になり、その増えた分を幕府の金庫に収めることができた・・・というわけです。

 

これって、学校で教わったときは貨幣の改悪と言われて、あまり良いイメージではありませんでした。

 

でも、この本を読むと真逆で通貨量が増えたことで元禄の好景気を呼び寄せたと解説されています。

 

日銀が金融緩和をしたのと同じような経済効果を生んだということですね。

 

興味深いのは、この後で新井白石なる人物が台頭してきて荻原重秀と真逆のことをやります。

 

小判3枚を溶かして2枚の小判を作り「小判の品位を元に戻した!」と胸を張るわけです。

 

しかし、このおかげで貨幣量が減少しデフレ基調となり景気が悪くなったようです。

 

著者の新井白石評が容赦ない!

 

白石がとらわれていた頑迷な考えを「貴穀賤金(きこくせんきん)」と言います。これは「米などの農産物は貨幣よりも貴く、お金は賤しいものだ。だから、農業以外の産業は仮の需要でありバブルである」という極めて間違った考え方です。

(中略)

白石は四書五経を丸暗記するぐらいの「秀才」でしたが、本質的にはバカだったのかもしれません。

余聞のこと

 

「余分」じゃないですよ。「余聞」です。

 

この本を読んでいて1か所、大笑いしてしまったところがありました。

 

日本円が数か月後に紙くずになって使えなくなると思っている人は、ほぼ100%いません。

あえて例外を言うなら、紫色の頭をした変な大学教授とか、「ハイパー・インフレがぁ~!!」と20年間言い続けている某国会議員ぐらいではないでしょうか。」

 

分かる人には笑えるネタですね。

 

まとめ

 

江戸時代は読んでいて面白いエピソードや解説が多くて、とても書き切れませんね。

 

上の方で荻原重秀と新井白石の真逆の政策についての話しを拾い出して紹介しましたが、その後に続くのがみんな大好き!「暴れん坊将軍」こと8代将軍、徳川吉宗です。

 

吉宗といえば「享保の改革」で有名ですね。

 

でも実態といえば質素倹約、贅沢禁止の緊縮財政による財政健全化を目指すものでした。

 

でも、なかなか成果が上がりませんでした。それでも後年にそれなりに名を残せたのは・・・「大岡忠相のおかげじゃねぇか!」って読んでいて思いました。

 

江戸時代って、この吉宗のように質素倹約、贅沢禁止の緊縮財政大好きなお殿様や側近がけっこういたんですね。

 

令和になった今も同じように財政支出カット!増税!財政再建!を叫ぶ政治はやまほどいます。

 

もしかしたら「質素倹約大好き病」は私たち日本人のDNAに刻まれているんでしょうか・・・?

 

この他にも諸大名が借金で首が回らなくなっていく一方で、たくましく成長していく商人、庶民の姿がとても印象に残る1冊でした。

 

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