経済で読み解く日本史(安土桃山)

読書

【歴史】「経済で読み解く日本史(2) 安土桃山時代」上念司:著

2019年6月13日

「経済で読み解く日本史(2)安土桃山時代」

上念司:著

飛鳥新社

 

「経済で読み解く日本史」全5巻の第2巻は安土桃山時代です。

 

きっと日本人なら誰もが知っている織田信長、豊臣秀吉という歴史上のスーパースターが登場する時代です。

 

この時代を振り返るとき、信長、秀吉がいかにして天下統一を果たしたか?!という点に興味や関心が集まり、視点は内向きになりがちですよね。

 

でも、この本を読むと当時の日本は既にグローバル経済に密接に関わっていた(それ故に、海外の動向によって国内経済が影響を受けていた)ことや、信長も秀吉もかなり早い段階から海外を意識していたことが理解できました。

 

特に本書の後半で明かされる秀吉の朝鮮出兵の失敗の本質は読み応えがありました。

 

アマゾンの内容紹介

織田信長は日本の統治形態を変え、戦国時代と中世を終わらせた。画期的な経済政策は豊臣秀吉に受け継がれ、明の貨幣制度および国際貿易体制の大変化に日本はようやく追いつく。秀吉は天下統一の勢いのまま征明を目指すが、そこには大きな落とし穴が待っていた。

信長を「正しく」評価せよ

尾張一国を苦労して統一し、「桶狭間の戦い」で大きな賭に勝った信長は、まさに叩き上げの創業社長でした。伸び盛りの中小企業の社長はとてもシビアであり、その行動理念は時代を超えて今の会社経営や国家戦略の実現にも通用するものです。

私が信長を見るときの視点は、まさにこの”実業家”としての視点です。信長の偉大さは政治家としての手腕もさることながら、尾張下半国の代官からスタートして、天下統一の一歩手前まで行ったその経営手腕にこそ見るべきものがあります。

 

信長といえば、桶狭間の戦い、姉川の戦い、長篠の戦いを勝ち抜いた勇猛な武将という感じでしょうか?

 

私、個人的には10年以上前のNHK大河ドラマ、「秀吉」で渡哲也が演じた信長の姿が強烈に焼き付いていて、冷徹で時に残虐な人というイメージを持ち続けていました。

 

しかし、筆者の上念氏は「信長は『覇王』ではない!」と書き、むしろ中小企業の創業社長だと喝破してみせます。

 

例えば、信長が比叡山延暦寺を焼き払ったことは有名ですよね。

 

でも信長が宗教弾圧をしたかといえば、実はそうでもない。

 

この本では「信長の宗教弾圧は政治的、軍事的な理由に基づくもの」であったと解説されています。

 

信長にいわせれば比叡山も本願寺も「邪魔だったから叩いた!」ということなのでしょう。

 

面白いのは、そうやって寺社勢力を叩きながらも他方で臨済宗や日蓮宗とは良好な関係を続けていたのだとか・・・

 

信長の宗教弾圧は後に徳川幕府が行ったキリスト教弾圧とは性質が違うものだったようです。

 

まさに信長は役に立つものは何でも積極的に活用するという創業者的な柔軟性を有していたと思われます。

 

この本の中で著者は、世にはびこっている「スーパースター信長」ではなく、もっと等身大の信長を読者に示してくれているように感じました。

 

なぜ明智光秀は裏切ったのか

なぜ明智光秀が裏切ったかーについては、これまでたくさんの説が囁かれてきました。

(中略)

私は信長の行動は中小企業の創業経営者のメンタリティで理解すべきだと思っています。この説を敷衍(ふえん)して、「中小企業でバリバリ働いてきた幹部社員が、ふとオーナー経営者の気まぐれに身の危険を感じ、行動を起こす」というストーリーを考えてみましょう。

 

今もって本能寺の変には謎が残っていて解明されていないことも多く、ここで書かれている明智光秀の裏切りの理由についても著者の推論に過ぎないのですが、私は読んでいてい「なるほど!分かる、分かる!」と思ってしまいました。

 

これより前の章で「伸び盛りの中小企業の社長はとてもシビア」だと著者は書いています。

 

そして、次のようにも書いています。

 

ある程度会社が大きくなって、より多くの優秀な人材を採用できるようになったら話は変わります。会社が小さい頃には有用だった人材も用済みになるからです。

 

つまり、経営者的に「こいつ、使えねぇ~」と思っていても会社が小さい時は他に人材がいないので騙しだまし使うしかない。

 

だけど会社が成長して優秀な人を採用できるようになると、過去の実績などおかまいなくシビアに、クビとか左遷することができるようになる、ということです。

 

経営者としては、それでいいかも知れませんが、リストラされる方はたまったものではありません!

 

つい、この前まで責任ある仕事を任せてもらえていたのに、ある日突然、手のひら返しされるわけですからね。

 

実は私・・・10年くらい前にこれと同じようなことをされた経験があります。。

 

詳しくは書きませんが、その当時、私は従業員300名くらいの中小企業でそれなりに順調に出世の階段を上がっていました。

 

ところが!ある日、社長がスカウトした人が入社してきて、それを境に私に対する社長の態度が一変し、左遷されました。。

 

一応、自分の名誉のために書き加えておくと・・・

 

その2年後、優秀と思ってスカウトしてきたその人物が実は私よりもポンコツだったことが露呈して、社長自ら私の左遷先にやって来て「戻ってきてくれ」と頭を下げられました。

 

話しを戻します。本能寺の変の話しでした。

 

石山戦争終結直後、尾張統一の頃から信長家臣団の重鎮が一気にリストラされたのです。

 

「こいつ、使えねぇ~」と思いつつ我慢して使っていた古来からの家臣団が信長によってリストラされたのを見た明智光秀が「次は自分の番か!」と焦りまくり、謀反を起こした・・・ということも可能性としては充分にあるわけです。

 

真偽のほどは定かではありませんが、信長を創業経営者として捉えると、こういうシナリオもあったのかもと納得させられました。

 

「朝鮮出兵」失敗の本質

 

天下統一を成し遂げた豊臣秀吉が晩年、朝鮮に出兵したということは学校の授業で習いましたよね。

 

なぜ、朝鮮に出兵?という疑問について学校の先生からは「更なる領地の獲得が目的だ」と教えられました。

 

しかし、朝鮮出兵の本当の狙いは朝鮮半島を通って明に進行することだったということをこの本で知り、ちょっとビックリしました。

 

実は秀吉の家臣の中にはマニラを攻撃すべし!と進言した人もいたとか!(それはそれでビックリしました!)

 

この当時、着々と東南アジアに進出してきていたポルトガルやスペインの脅威は信長や秀吉にも伝わっていました。

 

いつまでも国内で戦闘を繰り返していたら、外国から攻められてしまう!という危機感が秀吉の国内統一を急がせ、海外出兵へと向かわせていったと解説されています。

 

これって、250年くらい時代を下った幕末の頃の時代背景に似ていますよね。

 

もしかしたら、尖閣諸島を狙いに来ている中国、そしてミサイルを撃ちまくる北朝鮮、そんな周辺国の脅威に対していかに防衛するかとやっきになっている現代にも通じるところがあるのかも知れません。

 

ところで、なんでマニラでなく朝鮮半島?という疑問に対して著者は「プロダクトアウト」「マーケットイン」という現代のマーケティングのフレームワークを使って説明してくれています。

 

(詳しくは本書にてご確認を・・・)

 

そして、ご存知の通り秀吉の朝鮮出兵は秀吉の死というカタチで幕を下ろしました。何一つ得るものも無く・・・

 

秀吉の朝鮮出兵失敗の本質についても「ランドパワー」「シーパワー」という地政学のフレームワークで解説されています。

 

秀吉はイケイケ度が半端ではなかった。持てる力を最大限に使って、自分の代ですべてを成し遂げようとしてしまったのです。信長ですらそこまでできなかったのに・・・。

秀吉の最大のミスは、天下統一の成功モデルをそのまま海外にまで延長

しようとしたことです。「朝鮮出兵」さえやらなければ、豊臣政権の天下は揺るぎませんでした。

 

NHK大河ドラマ「秀吉」でも、天下人となった後の朝鮮出兵とかは殆ど触れられていないんですよね。

 

「晩節を汚す」という言葉がありますね。

 

私はこの言葉を聞くと条件反射的に、秀吉のことを思い出してしまうのです。

 

なぜ、秀吉は晩節を汚してしまったのか?

 

本来は、何をすべきだったのか?

 

その一つの答えが、この本の最後に綴られています。

 

まとめ

 

この本は以前に出版された「経済で読み解く豊臣秀吉」を再構成、加筆修正したものだそうです。

 

そして前回の記事で取り上げた「室町・戦国時代」につづく全5巻のうちの2冊目という位置づけです

経済で読み解く日本史5冊セット

 

上の方であまり貨幣経済のことについては書かなかったのですが、この本の中では「経済で読み解く」というタイトル通り、当時の経済状況についてもたっぷりと書かれています。

 

個人的には織田信長、豊臣秀吉という日本史の2大スーパースターの行動原理を経済、あるいは経営者というモノサシをあてて読み解き、世間に流布しているのとはちょっと違う2人の人物像が描かれている点に非情に興味を引かれました。

 

この後は、江戸時代です。

 

江戸幕府が何度も財政難から倹約令を出してみたり、他方では元禄文化などの花が開くなど好景気がやって来たりした景気循環がなぜ、どのように起こったのかについてとても関心があります。

 

また、レビューしていきますね。

 

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