●「読みたいことを、書けばいい。」
●田中泰延:著
●ダイヤモンド社

「読みたいことを、書けばいい。」はこんな人におすすめ
- 文書を書く楽しさを味わいたい人
- 自分が読んで楽しい文章の書き方を知りたい人
- 書くことで人生を変えたいと思う人
この記事で分かること
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なぜあなたが書いた記事は読まれないのか(答え:あなたは宇多田ヒカルではないから)
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あなたは何を書くべきか(答え:読みたいことを、書けばいい。)
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物書きは調べることが9割9分5厘6毛
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ネットでバズる文章の書き方
「読みたいことを、書けばいい。」の概略
アマゾンの内容紹介
「バズる記事を書きたい」
「ターゲットに刺さる文章を書きたい」
「自分の思いを読んでほしい」
そんな「技術」を学ぼうとする人は、出発点から間違っている。
もっとシンプルに、あなたが読みたいことを、あなたに向けて書けばいいのだ。
事実の中に、あなただけの発見を見出し、調べて、自分に向けて書く。
その結果、あなたは誰かとつながり、人生が変わる。
電通コピーライターとして24年、自分が読みたいものを書くために退職して「青年失業家」へ。
著者のプロフィール
1969年大阪生まれ。早稲田大学第二文学部卒。学生時代に6000冊の本を乱読。1993年株式会社電通入社。24年間コピーライター・CMプランナーとして活動。2016年に退職、「青年失業家」と自称しフリーランスとしてインターネット上で執筆活動を開始。映画・文学・音楽・美術・写真・就職など硬軟幅広いテーマの文章で読者の熱狂的な支持を得る。「明日のライターゼミ」講師。
ブロガーなら知っておきたいポイント

この本はブロガー向けに書かれた本でない。もちろんゴリラ向けでもない。
facebookやツイッター、mixiで日記(・・・という人はあまりいないか。。)を書いている人が読んでも得るところが多い内容になっている。
それでも、ブロガーなら思わず「なるほど!」と思うことを本書の中からいくつか拾い出してご紹介します。
なぜあなたが書いた記事は読まれないのか(答え:あなたは宇多田ヒカルではないから)
さて、あなたは腰の痛みと眠気に耐えながら1万字の原稿を書いた。(中略)さぁ、だれが読んでくれるか。
だれも読まない。なぜか。あなたは宇多田ヒカルではないからである。
よく文章指南の本には、「なにが書いてあるかが大切」という教えがかいてあるが、現実は違う。「だれが書いたか」のほうが、多くの人にとっては重要なのだ。
「だれも読まない。なぜか。あなたは宇多田ヒカルではないからである。」
うん、名言ですね。
ブログを書いている人なら、きっと経験があると思うけど、かなり気合を入れてブログをアップした翌日あたりにアクセス数をみると・・・「5」とか「8」という数字が表示されていたりする。
その時の気持ちといったら
「萎える」
その一言に尽きる。
かたや、芸能人が書いたアメブロなどをみると、「ロースカツ定食840円、美味しかった!」という内容で改行多め、写真ペタペタの薄い記事が何万アクセスも稼いでいるのだ。
これを理不尽と言わずして何という?
しかし、これが現実であることは私でも分かる。
私もあなたも宇多田ヒカルではない。
あなたは何を書くべきか(答え:読みたいことを、書けばいい。)

だれも自分の書いたものなど読んでくれない。
これが出発点である。それを前提にして、では宇多田ヒカルではない私は何を書けばいいのか?
その答えは表紙に書いてある。
「読みたいことを、書けばいい。」・・・・のである。
どーせ、だれも読んでくれないのなら、せめて自分が読んで面白いもの書けばいい。
・・・というのが著者の主張かと思いきや、実はもう少し奥が深い。
先ず、書くべきは「読みたいこと」であり「書きたいこと」ではないという点だ。
個人でブログなどを書いていると、ついつい自分の「書きたいこと」を一生懸命に綴ったりしてしまいがちだ。
だけど、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書いたところで大抵は面白くもない駄文が完成するだけである。
自分が心に思ったことを誰かに知ってほしい、誰かに伝えた!そういう気持ちはよく分かる。私だって同じことを思うし、かつてはそういう記事を書いてブログにアップしたこともある。
だけど、そういう記事は夜中に書いたラブレターと同じで、あとで読み返すと「うわぁぁぁぁ!」と叫び出したくなり黒歴史と化すのである。
著者によれば、自分を表現したい文章を書きたいと思っている人は「歩道橋で詩集を売ろう」ということだ。
次に、自分が読みたい文章とは「まだだれも読んでいない文章を自分で作る」ことだと著者は書いている。
裏を返せば、すでに誰かが書いているようなことを、わざわざ自分が今さら改めて書くことはなく「読み手でかまわないなら、読み手でいよう」ということだ。
他の人がすでに書いているようなことをわざわざ書く必要なはい・・・ってことですかね?(けっこうハードルを上げてきた印象がありますね)
まぁ、確かに他の人がすでに書いているようなことを一生懸命に書いたとして、それを自分が読みたいか?と言われればビミョーな気がします。
それでもネタに困って他の人の記事をパクって、さも自分が考えて書いたんだぞ!とネットにアップしたり原稿料をせしめようとすると「あなたのところにやってくるのは賞賛ではなく、警察である。もしくは著作権者からの内容証明郵便である」とのことなので、ご注意を・・・
物書きは調べることが9割9分5厘6毛

ネット上で読まれている文章のほとんどはこの「随筆」にあたるものである
先ず、著者はネット上の文章の多くは「随筆である」という。
では、随筆とは何か?
徒然なるままに心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書くこと・・・ではない。
わたしが随筆を定義すると、こうなる。 「事象と心象が交わるところに生まれる文章」
事象とはすなわち、見聞きしたことや、知ったことだ。世の中のあらゆるモノ、コト、ヒトは「事象」である。それに触れて心が動き、書きたくなる気持ちが生まれる、それが「心象」である。 その2つがそろってはじめて「随筆」が書かれる。
例えば、いま私は「読みたいことを、書けばいい。」という本を読んで感じたこと、思ったことなどを誰が読んでくれるか分からないにもかかわらず、こうして一生懸命にキーボードを叩いている。
この場合、本に書いてあったことが私にとっては「事象」であり、私が「うわぁ〜、面白い!ゴリラだってよ!」と思ったことが「心証」ということになる。
だから、この記事は「事象」と「心証」が揃っているので立派・・・かどうかは分からないが「随筆」であるということになる(本当か?!)。
ネットを見渡してみると、たいていは世の中の事件や事故、政治家などの発言、タレントの活動内容などに対して「あーだ、こーだ」と書いている人が多いので(当社調査)、どれも随筆なのかもしれない。
だが、大切なのは次の点である。

「ランチに行きました。そこでよりによってブロッコリーを見つけてしまった!!あたしブロッコリーすっごく嫌い!」という文章を読まされて面白いと思うか?
「事象」も「心証」も揃っている。だけど、きっと多くの人は「知らんがな」と思うのではないだろうか。もしかしたら、身近にいる優しい友人の1人か2人くらいは「へ〜、そうなんだ」と共感してくれるかもしれないが・・・
つまらない人間とはなにか。それは 自分の内面を語る人 である。少しでもおもしろく感じる人というのは、その人の外部にあることを語っているのである。
「あたしブロッコリーすっごく嫌い!」は自分の内面を語っているに過ぎない。
思ったこと、感じたことを素直に書けばいい・・・というものではないのだ。
では、どうすりゃいいのさ?!
事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るためには事象の強度が不可欠 なのだ。
ブロッコリーが嫌いだと言いたいなら、「ブロッコリーのこの嫌な臭いの成分は・・・」とか、「嫌いなブロッコリーをこういうレシピで試してみたら、案外と美味しかった」くらいのことを付け足せば、少しは興味を持ってもらえる文章になるかもしれない。
事象の強度が不可欠、というのはこういうことなんだと思う。
事象を強度するために必要なことは何かといえば、徹底的に調べ上げることだと著者は言う。
書くという行為において最も重要なのはファクトである。ライターの仕事はまず「調べる」ことから始める。そして調べた9割を棄て、残った1割を書いた中の1割にやっと「筆者はこう思う」と書く。
ライターの考えなど全体の1%以下でよい し、その 1%以下を伝えるためにあとの 99%以上が要る。「物書きは調べることが9割9分5厘6毛」なのである。
9割9分5厘6毛・・・・99.56% その計算根拠は示されていないが、とにかく徹底的に調べ上げることが大切だということは伝わってくる。
ネットでバズる文章の書き方

「面白くて、人の役に立ち、ネットでバズるような文章を書くためのヒントが知りたくて、この本を読んだのだ。」
冒頭で私はこのように書いた。いわば、私がこの本を読んだ目的だ。何ごとにも目的意識は大切でしょ?
果たしてその目的は達成できたのか?
答えはちゃんと書いてあった!
それも、この本の最後にズバリ一言で端的に述べられている。
心優しい著者は読者の心により深く記憶が残るよう配慮してなのか、コミック版「三国志」で有名な横山光輝先生が描かれた作中の一コマまで挿入している。
どんな答えであるのかは、是非とも皆さん一人ひとりが本書を手に取って確かめてほしい。断っておくが、その一言がどんなものであっても、例えあなたの意に沿わないものであったとしても私には一切、責任はない。
文句は著者に言ってほしい(笑)
まとめ
【ブロガーなら知っておきたいポイントのまとめ】
- あなたは宇多田ヒカルではない(何が書いてあるかよりも誰が書いたかが多くの人には重要)
- 自分が「書きたいこと」ではなく「読みたい」ことを書く
- まだ誰も読んでいない(誰も書いていない)文章を自分で創りだす。人が書いたものをパクると警察がやってくる
- 事象と心証が揃ってはじめて随筆が書かれる。心証だけを書いて自分を表現したい人は歩道橋で詩集を売る方が良い
- 心象を述べるためには徹底的に対象となる事象を調べ上げる
感想に代えて・・・本書と「マツコの知らない世界」
この本を読みながら何故だか私は「マツコの知らない世界」のことを思い浮かべていた。
「マツコの知らない世界」はご存知でしょうか?
毎週、その道のエキスパートというか、マニアというか、つまりは「オタク」の人が登場して自分がハマっているものがどれだけ面白いかということをマツコ・デラックス相手にプレゼンするというテレビ番組だ。
《番組サイト》
「マツコの知らない世界」TBSテレビ
- 15年間毎日10個以上の卵を食べている男が語る「ゆで卵の世界」
- 自宅で40個以上のフライパンを使い分ける男が語る「フライパンの世界」
- 豪華客船で地球21.5周したクルーズライターが語る「豪華客船の世界」
取り上げられるのはどれもオタッキーな内容ばかり。だけど、面白い!
なんでこの番組が面白いのかを考えていた時に、この本に書かれていることがその面白さを説き明かすヒントになることに気がついた。
先ず、いままで他の誰からも聞いたことがないことばかり。15年間毎日10個以上も卵を食べている人の話なんて今まで聞いたことない。
次に登場するオタクたちは誰も自分の内面なんてほとんど語っていない。まさに「ねっ、面白いでしょ?」という1%を言いたいがために99%の事象について語っているのだ。
最後に、オタクたちのプレゼンに対して適切なツッコミをいれるマツコのコメント。この本の中でも世にあまたとある面白くない文章を書く人々に対しての著者のツッコミが読んでいて面白い。
『文章力向上72のステップ』などという本を見ると、気が遠くなる。だいたい、いつまでステップしているのか。いい加減にホップルするなり、ジャンプしてはどうか。
この本にはこういう調子の文章がひじょうに多い。私は好きだし、読んでいて楽しいと思う。だが、世の中は広い。こういう文章を「ふざけている!けしからん!」という人もいるだろう。そういう人は、この本の半径3m以内には近づかない方が良い。
「マツコの知らない世界」がどれほどの視聴率をとっているのかは知らない。。。。
と、ここまで書いて筆が止まった。
「ライターの仕事はまず「調べる」ことから始める」
そうであった!調べなければ!それに「一次資料に当たらなければ話にならない」とも書いてあった。反省である。
ビデオリサーチのWEBサイトを見ると、概ね11〜13%くらいらしいことが分かった。健闘はしていると思うが、それでも「世界の果てまでイッテQ」や「ポツンと一軒家」には敵わないようだ。
それに対して、この本「読みたいことを、書けばいい。」は16万分突破で堂々のベストセラーである!(ソースはこれだ!)
大阪にいらっしゃる方々へ。
— 今野良介|編集者 (@aikonnor) September 24, 2019
今週いっぱい、大阪メトロⓂ️全線のドア横に、『読みたいことを、書けばいい。』の広告が掲載されています。
通勤通学お出かけで見つけた際には、目を細めたり、眉をひそめたり、苦笑したり、触ったり話しかけたりしてもらえたら幸いです。#読みたいことを書けばいい pic.twitter.com/I5t4t0gv2I
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是非とも、読むべし!
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