●「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」
●井上純一:著
●監修:飯田泰之(明治大学経済学部准教授)
●角川書店
[st-kaiwa1]「日本はなんで豊かになれないのか?」そんな疑問に答えてくれる1冊です![/st-kaiwa1]
「キミのお金はどこに消えるのか」「キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編」につづく「中国嫁日記」の井上純一氏による経済コミックの第3弾が発売になりました!
新型コロナ騒動によるマスク不足の話題などタイムリーな話題に触れながら、タイトルにある通り頑張っている私達がなんで豊かになれないのか?という日本の経済問題について解説されています。
今回の記事では主に本書の後半に描かれてる日本がいつまで経っても経済成長できない理由についてダイジェスト的にご紹介したいと思います。
アマゾンの内容紹介
コロナ禍の経済不安……あなたのお金を守る方法とは?
保育士の給料が安い、銀行の利子が低い、不景気で店がつぶれる……なんで日本はこうなった?
身近な経済の疑問を、中国からきたお嫁さん・月(ユエ)サンに分かりやすく徹底解説!
コロナ禍のいま、政府はどうすべき? その答えがここにある!
身近な“お金”の問題が、 スッキリ分かって、明るい未来が見えてくる!
笑って読めて役に立つ、世界一やさしい経済マンガ!!
1万円札は「1万円分の税金が払えるクーポン券」だ!

いきなりですが、1万円札って1枚刷るのにどれくらいコストが掛かるかご存知ですか?
だいたい20円ちょっとだそうです。
では、たかだか20円ちょっとの紙切れに何で1万円の価値があるのかといえば、日本国が1万円の価値を保証してるからですよね。
そして本書によれば、この20円ちょっとの紙切れは「1万円分の税金が払えるクーポン券」なのだとか・・・

ちょっと意味不明だと思うので、説明しますね。
例えば政府が突然「これからは税金を2倍にします!」と宣言したらどうなるでしょう?
たくさん税金を払わないといけないので、俄然「1万円分の税金が払えるクーポン券」の価値が上がりますよね。
そして、2倍の税金を支払うために多くの人が消費を控えるので、物の値段が下がります。
つまり、政府が増税すると、物の価値が下がって物価の押し下げ効果があるとともに世間からより多くのお金を吸い上げることができるのです。
反対に「税金を半分にします」となると、多くの人々は税金の支払いにも余裕ができますよね。そうすると消費も活発になって物価も上がるというわけです。
ココで押さえておきたいポイントは「政府は税金の上げ下げで世間に流通するお金の量と物価をコントロールすることができる」ということです。
ご存知のように日本は長い間、デフレに苦しみ経済が停滞しました。
本来であれば、税金を下げて世間に出回るお金の量を増やして、物価を押し上げなければならなかったはずなんです。
なのに・・・
消費税を2度も上げて、景気に冷や水をぶっかけたわけですヨ。
ちなみに、著者がわざわざ1万円札を「クーポン券」としたのには、もっと別の理由があるのですが、それは本書にてご確認くださいませ(ネタバレ自重)
コロナ禍のなかで増税を叫ぶ人たち

この記事を書いている2021年春、世間では新型コロナ騒ぎがまだまだ続いてます。
昨年、10万円の定額給付金をもらってから1年が経ちましたね〜
ところで!私の個人的な疑問なのですが、どうして二度目の定額給付金を求める声は盛り上がらないんでしょうね?
きっと、その答えはこれです。

政府がお金を使ったら、将来きっと増税される・・・と思っちゃいますよね。
たとえば先日、発生から10年が経った東日本大震災のときには復興にかかる費用として国は18兆円の支出を決めました。そして同時にその財源として「復興特別税」なんていうものを始めましたね。
このときは国民みんなで東北の復興を!という国民感情をうまいこと利用して増税したんですよ。
そして今回のコロナ禍でも一部の経済の専門家と言われる人たちの中から早くも「コロナ増税」なんて言葉も聞かれます。
何かというと、政府はすぐに税金を上げようとしてるような気がするのですが・・・
どういう時に政府は税金を上げるのか?この本で著者は言います。

日本政府は雰囲気で増税してる
増税できそうだなーって時に増税する
プライマリーバランスの黒字化で私達は豊かになれるのか?
ところで、なんで国はそんなに増税したがるのでしょう?

「増税したい!」「政府にお金がない」だから「もう政府はお金を使いたくない」
ところで、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」って言葉をニュースなどで目にしたことはありますか?
財務省のWEBサイトには次のように書かれています。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いにあてられる費用)を除く歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標となっています。
出典:財務省(https://www.mof.go.jp/faq/budget/01ad.htm)
もっと簡単に言うとプライマリーバランスとは「100兆円 国がお金を使うと・・・100兆円以上税金で回収する社会・・・」なのです。

公共事業や社会福祉などで国が支出する金額に対して、税収が足りなければ、どうするか?
答えは2つです。
支出を減らす(公共事業や福祉を削る)か、増税して税収を増やすか、です。
現在の日本は毎年、支出に対して税収が足りないので国債を発行してやりくりをしてる状況です。つまり、プライマリーパランスは赤字です。
こうして毎年、毎年、国債を発行し続けて積み上がった政府債務(よく国の借金って言われるやつね)は今や1200兆円を超えています。
「これ以上、借金を増やしてはいけない!」
「将来世代にツケを残すな!」
という掛け声とともにプライマリーバランスの黒字化を訴える人がたくさんいます(とくに永田町とか霞が関方面に)。
プライマリーバランスの黒字とは、今使うお金は現役世代の税金で賄う、つまり「100兆円 国がお金を使うと・・・100兆円以上税金で回収する社会・・・」ということ。
こんな不景気のときに、プライマリーバランスの黒字化を目指すと果たしてどうなるか?
増税!そして、財政の削減!ってことになりますよね。
これをやると、国民のお金はどんどん少なくなっていき、市場に出回るお金もどんどん少なくなって、経済がどんどん悪化してしまうんですよ。

PB(プライマリーパランス)黒字化は緊縮では達成できないんだよ。
経済が縮小して税収が減るから・・・
加えて
GDPが下がり
物価が下がり
給料が下がり
少子化が進んで
格差が広がって・・・
そうやって20年以上が日本から失われたんだよ・・・
でもね。
国の借金、1200兆円!!!!
国民一人当たり983万円!!!
とかって言われると「大変だぁ〜」って思っちゃう人が多いんですよね、きっと。

政府がいくら使ったかではなく物価の上下を見よ!

今回のコロナ禍で政府は第二次補正予算までで58兆円の新規国債を出しました(史上最大!)。
で、どーなりましたか?
まぁ、確かに国債の発行残高は増えたでしょうが、今のところ日本は財政破綻もしてないし、日本国債が紙くずになる気配もありません。
おまけに、消費者物価指数はずっと前年割れ状態が続いてます(2021年1月)。
フツーはお金をバンバン刷るとインフレ(物価上昇)になると言われてます。
ところが、史上最大規模の国債を発行しても物価はインフレどころかデフレ傾向ですよ!(ハイパーインフレになる!と言っていた人は土下座することを許します)
財政規律とかを口実にして増税したい人は「国の借金ガー!」ばかり言いますが、著者は言います。

政府がいくら使ったではなく、物価の上下を見ましょう
基本的に「円」建で発行してる日本の国債で日本が財政破綻することはありません(だって、円が足りなければ日銀がお金を刷ればいいのだから)。
お金を刷りすぎて(お金をばら撒いて)起こる困りごとは「インフレ」です。
物の総量がたいして増えていないのに、お金の量が増えたら物の価値が上がってお金の価値が下がるでしょ。
もしもインフレが加熱して困るような事態になったら、その時こそ増税してお金の量を減らせばいいのです!
「物価の上下を見ましょう」と著者がいうのは、そういう理由からです。
どれだけ現在の社会の豊かさを残せるのか?

この本には、井上純一氏による漫画の他に一緒に作品を作られてるアル・シャード氏による解説が掲載されているんですね。
その解説の中で、次のようなものがとても印象に残ったのでご紹介したいと思います。
世界各国はなぜ個人や企業に莫大な給付金や補償金を渡そうとしているのでしょうか?それは、社会をなるべく現状に近い形で残すためです。
(中略)
配れるお金がなるべく多くて早いほど、社会の傷は浅くてすみます。そして、いずれはやってくるコロナショック後に社会を復興できるのです。
ほとんどの仕事は細かいノウハウの蓄積によって効率を挙げているからです。仮に同じ施設、同じ数の人員をそろえても、失われたノウハウは元には戻せないのです。
すでに、多数の企業が倒産や解雇をしているという報道がなされています。そんな状況に歯止めをかけるためにも、増税などの緊縮財政をやっている暇はありません。どれだけ現在の社会の豊かさを残せるのか、今が勝負時なのです。
このコロナ禍での政府の対応については人によって評価が分かれてるんですよね。今回、政府がコロナ対策で出してるお金の額は世界各国と比べても決して少なくはないんですよ。
だけど!
企業やお店の廃業は増えてるし(倒産件数はそれほど増えてない)、失業したり収入が減少したという人も少なくないでしょう。
何故そうなるのか?
私が思うに単純に考えれば、政策が間違ってるからですよね。
政府はきめ細かい支援策・・・と言いますが、細かすぎて何がなんだかわからない上に政府の広報も足りてなくて(マスコミはそもそも支援策にケチはつけるけど、どんな支援策が準備されてるかなんて滅多に報道しない)、みんなに周知されてないんですよ。
それに、史上最高の国債を発行をしてもインフレになってないんだから、もっとお金を出せばいいと思うんですけどね。

「将来世代ガー」という人がいるかもしれませんが、アル・シャード氏が書いているように「どれだけ現在の社会の豊かさを残せるのか、今が勝負時」なのです。ここで変にケチると、ボロボロになった日本を将来世代に受け渡すことになりますよね。
感想とまとめ
この本のタイトル「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」。
その疑問に対する答えが少しはお分かりいただけたでしょうか?
まぁ、一言でまとめるなら「経済政策の失敗」ですよね。
増税したり、政府がお金を出し渋ったことで、20年以上も成長が失われたんです。

だけどね、と思う。
確かに政府の責任は重大だけど、私たち国民も間違っていたと思うんですよね。
何かあると「国会議員の給料を減らせ」とか「公務員が多すぎる」って声を上げる人がいるじゃないですか。
国会議員や公務員の給料を減らすということは、世の中に出回るお金が減るってことです。不景気の時にやることじゃない。
それに、役所の人員整理をした挙句に何が起こったか?今回のコロナ騒動でもう分かりましたよね。

個人的には、政治家や財務省のお役人さんには是非ともこの本を買って、1万回くらい読んで欲しいと思います。
だけど、まずは私たちがこの本を読んで、きちんと経済のことを理解して「将来世代ガー」とか「財政破綻する!」という話しに騙されないようにならないといけませんがね。

「どうして日本はいつも不景気なのか?」と疑問を持っている人。
「もっと豊かな生活を送りたい!」と思っている人には是非とも読んで欲しいと思うし、
特に「将来世代がー!」とか「国の借金がー!」って言ってる人はこの本を買って1万回くらい繰り返し読んでください。
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