[st-kaiwa1]消費税が逆進的だって、ウソ?ホント?[/st-kaiwa1]
先日のこと。
社会派ブロガーであり文筆家のちきりんさんが書かれた「消費税が逆進的だって嘘だと思う」というブログ記事が私のTLにご本人のリツイートで流れてきました。
開いて読んでみると、このブログ記事が書かれたのは2008年で、もう13年も前のものでした。
いささか古い記事ではありますが、読んでいてとても違和感がありました。
そこで今回は、あえて超有名ブロガーちきりんさんのこの記事に私なりの反論を書いてみたいと思います。
「消費税が逆進的だって嘘だと思う」の記事のポイント
まずは、この「消費税が逆進的だって嘘だと思う」には、どのようなことが書かれているのかをまとめてみました。
- 日本は歳出に対して税収が半分くらいしかないので、どこかの段階で大幅な増税が必要
- 財政再建のために必要なのは、基幹税である「法人税」「所得税」「消費税」のいずれかを倍にできる方策
- 3つの基幹税のうち税収、税率を倍にできるのは消費税しかない
- 消費税は逆進性が高いというが、本当にそうだろうか?
- 消費税に関しては間違いなくお金持ちの方が貧乏人よりもたくさん払う
- なぜなら、お金持ちの方が消費する(買い物する)金額が多いから
- 今後は高齢化で労働人口が減るので、働いてない高齢者からも徴収できる消費税は重要
- 日本には低年金、低所得だけど大金持ちという高齢者がたくさんいる(日本の貯金の半分以上は高齢者が持っている)
- 消費増税をして、貧しい人には別の福祉政策で再分配するべき
全文を読まれたい方は、こちらからどうぞ。
消費税の逆進性は嘘じゃない
ちきりんさんが消費税が逆進的でないというのは何故なのか?
たぶん
消費税に関しては、まず間違いなくお金持ちの方が貧乏人よりたくさん払います。
この意味で、「消費税の逆進性が高い」というのが、私には嘘に見えます。
「消費税は貧乏人に不利で金持ちに有利だ」というのは、教科書的な理論にすぎないのでは?
と、いうことなんでしょうね。
だけど、私には「逆進的」の意味をちょっと誤解されてるような気がするんですよね。
まず、言葉の定義から。
ぎゃくしん‐せい【逆進性】 の解説
それぞれが逆の方向に進む傾向。例えば、消費税率が上がると低所得者ほど収入に対する食料品などの生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者よりも税負担率が大きくなるということ。
(出典:goo辞書)
逆進性(ぎゃくしんせい)の意味 - goo国語辞書逆進性(ぎゃくしんせい)とは。意味や解説、類語。それぞれが逆の方向に進む傾向。例えば、消費税率が上がると低所得者ほど収入に対する食料品などの生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者よりも税負担率が大きくなるということ。 - goo国語辞書は30万5千件語以上を収録。政治・経済・医学・ITなど、最新用語の追加も定期的に...
ちきりんさんは、消費税の負担「額」のことを論じてますが、一般的に「消費税の逆進性」というとき、論点は負担の税額ではなく、負担割合についてです。
簡単に説明します。
Aさん
可処分所得:20万円/月
消費支出:16万円/月
消費税負担額:16万円×10%=1.6万円
消費税負担割合:1.6万円÷20万円=8%
Bさん
可処分所得:80万円/月
消費支出:40万円/月
消費税負担額:40万円×10%=4万円
消費税負担割合:4万円÷80万円=5%
低所得のAさん、高所得のBさんを比較すると確かに消費税「額」でみれば、高所得のBさんの方が多く負担してます。
しかし、可処分所得に対する消費税の負担割合で見れば、低所得のBさんの方がより大きくなってます。
これが消費税は低所得者の方がより負担感が大きくなるという根拠です。
この意味で消費税が逆進的が高いというのは嘘ではない、と私は考えます。
消費税は景気を冷やす
消費税は低所得者に対して、より大きな負担を強いるという点の他に世の中全体の景気を冷やすという問題があります。
2014年に消費税を5→8%に増税、2019年に8→10%に増税したとき、その両方とも直後から消費支出が減少してます。
風の噂に聞くと、14年に消費増税するときに消費の冷え込みを心配する当時の安倍首相に対して、財務省の役人は「一時的に消費は冷え込むが直ぐに回復する」と説明したそうです。
しかし、消費支出が再び上向くまで3年かかりました。
賃金が大して上がってないのに、消費増税されるというのは可処分所得が削られるのと同じことですから、景気が冷え込むのも当たり前です。
そして何より、グラフを見てもらえれば分かる通り、日本はこの20年ずっと消費は落ち続けているのです。
ちきりんさんはブログで「「税率を倍」&「税収を倍」にできるのは、消費税しかありません」と書かれてますが、そんなことをしたら日本の景気がどれだけ落ち込むことか!
想像すると怖くなります。
増税で税収は改善されないのでは?
そもそも消費増税が必要だという理由は、日本は歳出に対して税収がその半分程度しかない、だからどこかの段階で大幅な増税が必要だ、というものでした。
私が思うに「財政を改善するために増税が必要だ」という前提が間違ってるのではないかと思ってます。
なぜなら、消費増税をしても日本の税収は増えてないからです。
1989年に消費税が導入されてから30年あまり、確かに消費税収は税率が上がるにつれて増えてきました。
しかし、一般税収という全体で見ると、ほとんど増えてません。
バブル崩壊とそれに続くデフレ不況、08年のリーマンショックと低迷を続けて、やっと上向いてきたのは2012年にアベノミクス が始まってからです。
それでも30年前の1990年頃の税収と同じくらい。
結局、いくら消費増税しても日本の財政は改善しなかったし、税収も増えませんでした。
一説によると増税によって財政を立て直した国は世界中のどこにも無いといいます。
では、税収を増やして財政を改善するためにはどうすればいいのか?
「景気回復」これです。
増税ではなく景気の回復、これこそが税収を増やして財政を改善するために必要な方法なのです。
実際、日本はバブル崩壊後、デフレやリーマンショックで景気が悪かった時期は税収が低迷し、アベノミクス で雇用が改善し、株価も上がって、景気が上向いたらそれに連れて税収も回復の兆しが見られました。
したがって「どこかの段階で大幅な増税が必要」というちきりんさんの意見には与することができません。
まとめ
ちきりんさんがこの記事を書かれたのは2008年5月。
実はこの時期、小泉政権の頃から始まった戦後最長といわれた景気の拡大期がそろそろ終わりを告げようとしていた頃です(この記事から約4か月後にリーマンショックが起きて、日本はおろか世界経済が落ち込みました)。
この時期、実感してる人は少なかったと思いますが、まぁそこそこ景気は良かったんですね。
実際、上の税収のグラフを見てもらえればわかると思いますが、この時期は少し税収が上向いてますよね。
あの頃と今とでは日本経済の様子も違いますが、それでもあえて私は「消費税には逆進性がある」と思うし、「増税で財政が改善されることはない」と思ってます。
もしかしたら、既にこの記事についての議論はとっくに済んでるのかもしれませんが、私は今回が初読だったので、こうして自分の考えを記事にしてみました(1周遅れどころか、13周遅れですが。。)
ちきりんさんの意見に対しては真っ向から反対するような感じになってしまったけど、きっとこれも私が「自分の頭で考えた」ことなので、ちきりんさんは笑って許してくれるでしょう。
そんじゃーね!
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