[st-kaiwa1]介護で苦労してませんか?
せめて精神的に少しでもラクになりたくないですか?[/st-kaiwa1]
今回は映画化もされた「ペコロスの母に会いに行く」の著者、岡野雄一さんが書かれた介護にまつわるエッセイ「ボケて幸せな生き方」から幸せな介護のために大切な3つのことをまとめてみました。
私が思う「幸せな介護のために大切な3つのこと」は以下の通りです。
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- 認知症も悪いことばかりじゃない
- 認知症を面白がる
- 適当な距離感を保つ
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アマゾンの内容紹介
ベストセラー『ペコロスの母に会いに行く』著者が勧める、認知症との前向きな付き合い方。世間では認知症を過度に恐れ、「予防法」や「治療法」ばかりが取り上げられるが、著者はこう言う。「忘れることは悪いことばかりじゃない!」―認知症に悩み不安になるすべての人に送る優しいメッセージ。
ボケるのもそんなに悪いことばかりじゃない
親がボケた!となると、どうしても「かわいそう」とか悲壮感みたいなネガティブなイメージがわいてきますよね。
だけど、著者はこの本の中で「ボケるのもそんなに悪いことばかりじゃない」と書いてます。
認知症が進行するにつれ、仲のよかった幼なじみや晩年に穏和になった父など、すでに亡くなっている人々が幻覚で現れたり、楽しかった子供時代に戻ったり、いい思い出だけが濾過されて残っていくように見えました。
いい思い出だけが残るのなら、ボケるのもそんなに悪いことばかりじゃない──というのが私の実感でした。
著者のお父さまは若い頃、お酒を飲むたびに暴れてお母さまにたいそう苦労させたそう。だけど、認知症になったお母さんは晩年の穏やかなお父さまの思い出ばかりを話していたそうです。若い頃のつらい思い出はすっぽり抜け落ちてしまっていたんですね。
ちょいボケになった私の母もそうでした。父や私や弟のことで色々と苦労したり泣いたことも多かったのに、亡くなる少し前、枕元の私に対して「ありがとな。幸せだったよ」と言ったのです。
認知症というと、確かにマイナスの側面もたくさんあると思います。
だからといってマイナスばかりじゃない。「いい思い出だけが濾過されて残っていく」のなら本人にとっても家族にとっても「ボケるのもそんなに悪いことばかりじゃない」のかもしれません。
認知症を面白がる
親が認知症になると時おり少し困った行動をすることがありますよね。
「ああ、またこんなことをして!」と嘆いたり、怒ったりしても仕方がないわけで、「これは話のネタになるな」と面白がるくらいの気持ちを持ったほうが精神的には楽になるのではないでしょうか。
私の経験を少しばかり・・・
私の母はちょいボケになった時点で既に足腰が立たなくなっていたので、徘徊とかは無かったのですが、時々ワケのわからないことを大声で言ったり、私の腕に爪を立てたり、つねったりするのには何度も閉口させられました。
でも、そういう困ったことばかりでもなかったんですよね。
ある日のこと。母がテーブルの上にあったミネラルウォーターのペットボトルをしげしげと眺めていたかと思うと、おもむろに水を手のひらに少し取って自分の顔にペタペタと塗り込み始めたのです。
どうやら化粧水と勘違いしたらしいのです。「きれいになったね」と私が言うと、母はニッコリと笑いました。その笑顔はまるで童女のようでした。
不可解な言動のたびにイライラしてしまうと、介護する側の心がすり減ってしまうと思うんですよ。
それよりも、なにかおかしな言動があったらネタにして笑ってみるくらいの心の余裕をもつ工夫をしてみるのがいいんじゃないかと思うんですよ。
例えば、日記に書いてみる、SNSに投稿してみる、そんなふうにして少し客観的な視点を持つことがコツのような気がします(直接的なネガティブな感情をぶつけるよりも、すこしユーモラスな脚色をしてみると更に良し!)
著者も認知症になったお母さまとの日常を漫画にすることで、心のバランスをとっていたようです。
漫画にするという行為は、他人に見せるということなので、本当にキツい話をそのまま描くわけではありません。絵も丸っこいですが、話も丸めるわけですね。 そういう形での創作というのはけっこうあって、重い話を軽くして、大したことじゃないって感じにして、ギャグにする。そうやって再構成することによって、出来事を客観視して冷静に受け止め、実は大したことではないんじゃないかと受け入れられたような気がします。
距離感はすごく大事
時々、介護を苦にして心中を図った・・・みたいな悲しいニュースがありますよね。
そんなニュースに接するたびに、たぶんガッツリ在宅で介護をしていて、もしかしたら周りに頼れる人がいなかったのかなぁ、って思ってしまいます。
親の介護をするときに距離感って大事だと思うんですよね。
真面目な息子さん、娘さんほど、「他人に任せず、自分が親の面倒を見よう」「認知症という〝病気〟に正面から立ち向かおう」という意識が強く、結果的に一緒に倒れてしまうことが多いように思います。
でも、自分一人で最期まできっちりできるはずがないんですよ。どこかでプロの手を借りる、施設に入れるということも必要になってきます。そうなると、金銭的な理由も含めて、こっちがしっかりと立っているということが大事じゃないかなと思います。
著者の処女作「ペコロスの母に会いに行く」っていうタイトルにある「母に会いに行く」っていうのは、自分は一緒に住んで介護をしてるわけじゃないという後ろめたさや自虐的な意味が込められているそうです。
お母さまをグループホームに預けていて、会いに行って話しをしたり一緒に散歩に行ったりするけど、介護の本当に大変な部分は他人任せにしてる後ろめたさがあったのだとか。
でも、介護を他人任せ、というか介護のプロに頼むのは決して悪いことじゃないと思うんですよ。
私の場合、ほぼ24時間ずっと付きっきりで母の介護をしてましたが、週に何度か来てくれる訪問看護師さんやケアマネジャーさんには随分と助けてもらいました。
時にはグチを聞いてもらったりしたし、アドバイスを貰ったことで介護がやりやすくなったこともありました。
そういう介護のプロの人たちって、介護をする家族のケアという面でもプロなんですよね。
とにかく介護では、介護する側が「しっかりと立っているということが大事」で、そうでないと『共倒れ』になってしまいます。
そのためにも「抱え込まない」「孤立しない」こと、そして介護のプロに頼ることをためらわない、それが幸せな介護のために絶対に必要なことだと思うのです。
感想
子育てと介護
この本全体から伝わってくるのは「優しさ」です。
経験のある人なら分かると思うんだけど、なんだかんだ言っても介護は大変です!肉体的にも精神的にも。。
そんな大変な介護体験もちょっと視点を変えてみたり、心の持ち方を変えてみることで、優しい気持ちになれることをこの本は教えてくれます。
実際、私も母の介護をしてるときにこの本には何度も救われました。
認知症というのは、老いていくなかでの一つの変化で、いろいろな辛さや困難というものを捨て去っていくんです。だから、昔は、「わらし返り」って言ったんですよね。「童子返り」と書いて「わらし返り」。
ちょいボケになった母に付き添っているときに「子どものようだ」と思ったことが何度もありました。
そして思ったんですね。私が子どもだったとき母もきっと「しょうがないなぁ」とか思いながら、夜泣きをあやしたり、おむつを交換してくれたんだろうな、と。
子どもだった自分と、子どもに返った母、その姿が交錯したときに「これも(介護も)恩返しだなぁ」って思えて気持ちがスッとラクになったんです。
認知症は「多幸症」
それから「認知症は多幸症」という考え方も印象に残りました。
実は認知症は多幸症という面もある。そうとらえたほうが、周りも絶対気が楽になる」と教えていただきました。多幸症というのは、強い幸福感に包まれた状態になることです。
「本来は認知症の人は多幸感に満ちているはずだ」と言いますが、介護の側の都合を押し付けてしまうから、問題行動につながって、多幸感が失われてしまっている。
これまた私の経験談ですが、ある日、母が「お婆ちゃんはどこに行った?」と聞くので、「もうとっくに死んだでしょ」と返したところ、大泣きされてしまったことがありました。
たぶん、あのとき母は時空を超えて子どもに返って祖母に会いに行っていたんですね。
今でいうシングルマザーだった祖母に育てられた母は祖母のことが大好きだったのです。そんな大好きな祖母に会いに行くという幸せな瞬間に、バカ息子(私のことですが・・・)がとんでもないことを言ったものだから、泣いて当然だったのでしょう。。
介護をしてると、どうしても自分本位というか介護する側の目線で色々なことを判断してしまいがちです。
でも時には、相手の気持に寄り添って話を聞いたり、対処してあげることが大切なんですね。
「優しい幸せな介護」のために
長年、自分を育ててくれた親の人生の最後の数年(あるいは数か月)にどう立ち会うか?
「介護=大変なこと」、「認知症=不幸なこと」というネガティブなイメージだけで介護をしてしまうと、身も心もすり減ってしまうような気がします。
それよりも「介護」とか「認知症」というものに対する先入観を一度リセットして、できるだけ優しい気持ちで付き添ってあげた方がいい。
この本には、そんな優しい気持ちになれる考え方や言葉が詰まってます。
これから介護をする人も、いま介護をしてる人もぜひ手にとってほしい1冊です。
それと、著者の処女作「ペコロスの母に会いに行く」から数話が収録されてます(私はこの著者が描くお母さまがとても可愛らしくて大好きです)。この本を読んで、興味を持たれたら是非ともコミックの方も読んでみてください。
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